水産加工品メーカー、松岡水産(千葉・銚子)の「サラダサーモン」が売れている。時流に乗った商品開発と、地道なプロモーション活動が功を奏し、いまでは月間35万パックを出荷する主力製品の1つに。マーケティングを担当した佐藤大海氏にヒットの背景を聞いた。

出荷伸び続き生産頭打ちに
──現商品が生まれた経緯は。
「サラダサーモン」は当社の社長と専務が考案しました。狙いは、魚を原料とした商品で新たな需要を生み出し、工場の稼働率を高めることにありました。
現在、魚は昔ほど獲れなくなった上、世界的に需要が高まっており、価格が高騰しています。我々メーカーは製品を値上げするか、内容量を減らして対応しているのですが、それが原因で水産物の市場規模は縮小しています。
「魚は骨があって、食べるのが大変」というイメージが多くの消費者にあるようで、市場縮小の一因と考えられています。共働き世帯の増加などの社会環境の変化で、家庭では調理になかなか時間を割かなくなった。結果、調理が必要な焼き魚や煮魚などは食卓にのぼりづらくなったのでしょう。
出荷量が減れば、当然工場の仕事は減ります。工場は回し続ければ効率的に利益を生みますが、加工する原料が少なくなると、工場の休みが増え、利幅は大きく落ち込みます。工場が生産していない時間も人件費などはかかり続けるためです。既存の商品の売り上げを伸ばすか、売れる商品を新たに開発し、工場の仕事を増やす必要がありました。
そこで、当時話題になっていた「サラダチキン」に着目しました。「サラダチキン」は簡単に食べられ、調理素材としても便利な商品です。
我々の目には、水産物が売れない理由をすべて克服したような商品として映りました。高たんぱく・低脂質なヘルシー食品であることは、魚も負けていません。こうして、加工原料として多く買い付けているサーモンを使った魚版「サラダチキン」の開発を始めました。
まず、社員が煮魚ラインで魚版「サラダチキン」のサンプルを遊び感覚でいくつか作りました。その中で、もともと工場を回すことが目的で始まったのだから、スモークサーモン用燻製機があまり動かない時期はこれも活用し、スモークサーモンで魚版「サラダチキン」を作ってしまおうと思い立ちました。この「燻製」という工程が味の面で付加価値になりました。
ほかに例があまりないのですが、当社は煮魚ラインとスモークハウスを同じ敷地内に置いています。それがたまたま、「サラダサーモン」の強みになりました …