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ヒットの仕掛け人に聞く

「自虐」が話題に 商品の伸びしろ見えた

赤城乳業 ガツン、とみかん

赤城乳業(埼玉・深谷)の「ガツン、とみかん」が売れている。看板商品の「ガリガリ君」と比べて不振であることを自虐的に発信した、発売20周年プロモーションが寄与した。5本入りタイプの出荷量は9月末までで昨年超えに。冗談半分、本気半分の一連のプロモーションを発案したデザイナーの高堀健太氏と、マーケティング担当の中島一輝氏に企画の効果などを聞いた。

ことしは9月末で前年出荷量上回る

──ことしの「ガツン、とみかん」の売れ行きはいかがでしたか。

中島:ことしは売り上げが大きく伸び、1~9月の「ガツン、とみかん(マルチ)」の出荷量は前年に比べ120%増えました。

「ガツン、とみかん」は毎年9月ごろ、秋冬向けのオレンジ色を主体としたパッケージへ切り替えるのが通例なのですが、ことしは夏場の売れ行きが好調なため、早々に青空を背景とした春夏向けパッケージが売り切れてしまいました。結果、8月下旬には秋冬向けパッケージが並ぶこととなりました。

猛暑が販売を後押ししたのはもちろんですが、ことし5月から行ったプロモーションが大きく貢献したと思います。

──プロモーションはどのような施策を実施しましたか。

髙堀:赤城乳業の看板商品である「ガリガリ君」より売れていない点を自虐的に発信しました。

5月1日からは、「ガリガリ君より売れていないのに20周年。」というキャッチフレーズと、「ガツン、とみかん」のイメージキャラクター「ガツン君」の悲しげな顔を添えた周年記念ロゴをパッケージにあしらい、販売しました。

パッケージの側面には、商品にまつわる自虐的なエピソードを描いた4コママンガを載せました。たとえば、2016年にアイスの形状を四角形から三角形に変えた際、「食べやすくなった」との声があった一方で、「小さくなった」「食べ応えがなくなった」などお叱りをいただいたことや、「『ガツン、と』シリーズで食べたい味は?」というアンケートの回答に「りんご」や「もも」「ぶどう」など、すでに発売されていたものがあったというエピソードを紹介しました。話は8つあり、内容は事実に基づいています。

5月7日からはTwitterの公式アカウントで、ちょっぴりネガティブな投稿を始めました。5月9日につぶやいた「ガリガリ君より売れてないボクの20周年なんて……」という4コママンガの投稿は、「いいね」が4万6000件、リツイートが2万3000回、コメントが1700も付くほどの反響でした。

その後も投稿ごとに反響をいただき、フォロワー数は順調に増加。アカウントを開設した4月は200人だったのですが、10月23日時点では1万2000人を超えるほどになりました。フォロワーの中には「初めて食べた」とつぶやく方もおられ、ソーシャルメディアを通じて新規顧客を開拓できた実感があります。

6月20日には、「ガツン、とみかん」の20周年記念の特設Webサイトを開きました。商品の特設Webサイトは基本的に閲覧者が多くはないものだと思っていましたが、サイトに付けたソーシャルメディアのシェアボタンによる投稿が多くあったことを鑑みると、効果があったのだと思います。

7月には、芸人のヒロシさんによるテレビCMのオンエアも始めました。このネガティブなプロモーションを考えついた際、真っ先にうかんだのが、ヒロシさんのまとう哀愁でした。今回のプロモーションにイメージがぴったりで、このCMの反響も大きかったように思えます。


──このような大胆な販促施策に至った経緯は。

髙堀:昨秋から若手社員を中心にプロモーション企画を練るプロジェクトを立ち上げ、20周年記念について議論しました …

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