NTTコミュニケーションズシャイニングアークスは、ことし4月に練習場を千葉県新浦安の「アークス浦安パーク」へ移転した。7月にはチームの親会社であるNTTコミュニケーションズと浦安市が相互連携・支援協力における協定を結び、地域とのかかわりを強化している。
ビクトリーとバリュー チームが目指すふたつの「V」
ジャパンラグビートップリーグ(トップリーグ)は、社会人ラグビーの全国リーグ。国内で行われる15人制ラグビーの最高峰に位置づけられるリーグだ。参加する16チームは、すべて企業を母体としている。プロ契約を結ぶ選手もいるが、社員として、社業と並行して活動している選手もおり、その意味では完全なプロリーグではない。
「シャイニングアークス」がトップリーグ昇格を果たしたのは2009年のこと。同チームは、1976年に発足した当時のNTT東京支社ラグビー部をルーツに持つ。NTTの民営化など、いくどかの組織変更を経て、1999年にNTT東日本ラグビー部に。2007年からはNTTコミュニケーションズラグビー部として活動している。
トップリーグはプロリーグではないため、観客動員数がチーム運営に与える影響は小さい。それでも毎年、ラグビー人気の喚起を目的として、観客動員数に目標を設けている。2018−2019シーズンの目標は50万人だ。
昨シーズンからは各チームや、試合開催地のラグビー協会が主催権を持つ興行試合も認められ、試合開催による収益獲得を目指す動きもある。ただ、現状は限られた一部の試合にとどまっている。
シャイニングアークスも集客、ファン獲得の重要性を認識しているが、その対象は社会人スポーツらしい視点で設定している。この7月からチームでマーケティングを担当する磯田金吾氏はこう話す。
「企業スポーツなので、会社から運営資金を出してもらって活動しています。つまり、会社がスポンサーのようなもの。そう考えると、まず私たちが価値を還元すべき対象は、所属するNTTコミュニケーションズ。まずは株主や社員をファンにすることを目指しています。それがひいては、一般のファン獲得にもつながるのではないでしょうか。ひるがえせば、社内で"自分たちのチーム"と考えてもらえないままに、一般のファンを増やそうとするのは筋違い。まずは社内を固めたいんです」
そこで企業に所属するチームとしての存在意義を見直し、ふたつの「V」をテーマに設定した。ラグビーチームとして目指す「勝利(Victory)」と、チームとして会社にスポーツの「価値(Value)」を加えようというものだ。
選手が一般社員と交流する機会も設けた。その内容は、選手が参加する「未来プロジェクト」での議論「フューチャーセッション」で決めている。「未来プロジェクト」は、選手自らが、社内での存在意義や、チームの価値を高める施策を考える、チームと会社の未来を見据えたプロジェクトだ。
「未来プロジェクト」で生まれた企画もある。「押しかけラグビー」だ。選手がさまざまな部署、事業所を訪ね、パスやタックルなどのラグビー体験をしてもらうもの。NTTコミュニケーションズは内勤の社員も多く、彼ら、彼女らが体を動かす機会は多くない。「押しかけラグビー」は、社員の健康増進も考え、生まれた。
「訪問先の社員には、『1週間犬の散歩をします』などの、運動をテーマにした宣言もしてもらっています。また、選手たちはトレーニングだけでなく、食事や休息の知識も持っています。一般社員との交流の場でそれらを共有すれば、社内でのラグビー部の認知を高めつつ、選手も自分たちの価値を感じられる。そんなねらいがあります …