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リテールAI、生鮮品の拡大、コラボ事例 未来のコンビニ

中国現地レポート アリババと新興企業がしのぎを削るニューリテール

山谷剛史氏(フリーランスライター)

テクノロジーを柔軟に取り入れ、はるか先を行っているかのように聞こえてくる中国の小売業。実際はどうなのでしょうか。現地在住ジャーナリストの山谷剛史氏による寄稿です。

中国のセブン-イレブン店舗。日本の店舗とそう変わらないように見える。しかし、サービス面では日本のほうが多様だと山谷氏は言う。

電子決済で先行するもサービスには成長の余地

中国連鎖経営協会(中国チェーン協会)の「2018年中国便利店発展報告」によると、中国コンビニエンスストアの市場規模は、2015年に1181億元(約1兆9000億円)、16年に1543億元(約2兆5000億円)、そして17年は1905億元(約3兆500億円)と拡大を続けている。店舗数は、2015年は9万1000店舗、16年は9万4000店舗、17年は10万6000店舗とやはり拡大の一途をたどっている。

中国にはセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンといった日本のコンビニが進出する一方、中国ローカルのコンビニチェーンもある。中国全土に出店するコンビニらしきもので言うと、ガソリンスタンド内にある「易捷」と「昆侖好客」があるが、これはコンビニとは言い難い。

ガソリンスタンド系を除くと地域限定のコンビニしかない。たとえば上海では「好徳」や「可的」が、広東省では「美宜佳」が、四川省成都では「紅旗」が知られている。上海ではファミリーマートやローソン、広東省ではセブン-イレブンもよく見かける。

コンビニが競合する都市は上海や広州くらいで、多くの地方都市ではコンビニ店同士の競争はほとんどないように感じる。中国の各都市において、コンビニの密度はまちまちで、地方のコンビニのライバルはむしろ、菓子類や飲料水を扱っている個人商店だ。

そういったコンビニでは、スーパー顔負けの値引きキャンペーンで個人商店との差別化を図っていたりする。「関東煮」と呼ばれるおでんやおにぎりのようなコンビニならではの商品に、イートイン、オンラインショップで購入した商品の受け取りができる強みは、日本と変わらない。それでも、日本のコンビニのほうが多様なサービスがあると感じる。

中国企業が日本の小売りを視察するツアーもあるが、それが中国のコンビニに反映されているかというと、まだまだこれからである。たとえばチェーン店における直営店の割合は、日本ではセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンら大手3社は5%以下であるのに対し、中国では6割弱が直営店で加盟店は4割強しかない。また、80%の企業において、販売商品におけるプライベートブランド(自主企画商品)の割合は10%未満だ。そしてさまざまな特典を用意した会員制度も、4割の企業しか採用していない。

一方、中国のコンビニが日本のそれより上回っているのは電子決済だろう。どのコンビニも電子決済による支払いがマストだ。個人商店ですら当然のように電子決済に対応している。

売上金額の3割以上が電子決済というコンビニ企業は、2016年の31%から2017年は56%に上昇した。電子決済による売り上げのうち、49%がテンセントの微信支付(WeChat Pay)、47%がアリババ系企業のアントフィナンシャル社の支付宝(Alipay)となった。

各所で伝えられているように、中国では9月現在、物価上昇が顕著だ。コンビニ運営のコストは、昨年比でテナント料が18%、コストが12%、光熱費が6.9%とそれぞれ上昇し、利益率が年々低くなっている。こうした中で彼らはオンラインに活路を見出そうとしている …

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