これまで惣菜や刺身は、いかにボリューム感を演出できるかが販促の鍵だった。ところが、コンビニの惣菜や刺身にボリューム感はあまりみられない。代わりに、フタにはおいしそうな商品の写真が。商品の魅力発信へ、パッケージデザインの市場が新たに開かれつつある。
セブン-イレブンがコンビニの魚惣菜でヒットを飛ばしたことで、ファミリーマートやローソンなどの競合はもちろん、食品業界にもインパクトをもたらした。「何より、トップシール(包装)で惣菜が市場に受け入れられるなんて想像していなかった」と、当時をふり返るのは、セブン-イレブンの魚惣菜開発で一翼を担った包装機械メーカー・東京食品機械(東京・中央)の的場顕治氏だ。
ボリューム感薄くても売れる セブンが惣菜の売り方変えた
「トップシール包装」を説明する前に、スーパーに並ぶ惣菜商品がどんな姿をしているか、想像してほしい。透明で立体成型されたフタから中の惣菜が見えている、もしくはラップフィルムに惣菜がその形に沿って密着している、という姿がまず目に浮かぶのではないか。
立体で透明なフタは「嵌合(かんごう)フタ」と呼ばれ、フタの高さの分、中身を多く盛り付け、食品を立体的に見せることができる。ラップフィルム包装も狙いは同じで、柔軟性が高く透明なラップフィルムなら高さのある食品でも、その高さを損なわずに包装できる。要は食品のボリューム感を来店者にアピールするのに適した包装だ。
では、コンビニ惣菜はどうか。豆腐製品のように、深さのあるトレーに、シールを上から貼った形をしている。たとえシールを透明にしても、上からのぞく格好で、中身のボリューム感は伝わりづらい。実はこの包装形態が「トップシール包装」だ。
食品業界では、長らく生鮮品や惣菜は「嵌合(かんごう)フタ」やラップフィルムでボリューム感を演出できる包装でないと売れないと考えられてきた。そんな中、あえてセブン-イレブンが「トップシール包装」の惣菜開発に挑戦したのは、主に商品の賞味期限を延ばすためだった。
現在のコンビニ惣菜のほとんどは、「ガス置換包装(MAP)」という包装技術が採用されている。これはパック内の酸素・窒素・二酸化炭素を絶妙にコントロールし、食品の保存にもっとも適した環境を作り出す技術 …