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リテールAI、生鮮品の拡大、コラボ事例 未来のコンビニ

購買意欲をビッグデータであぶり出す リテールAIが販促を変える

田中雄策氏(リテールAI研究会 代表理事)

人工知能(AI)が小売業に与える恩恵は大きい。それだけに小売業者はもちろん、メーカー側の関心も高い。昨年5月には情報収集の場としてリテールAI研究会が設立。18年9月10日時点で大手メーカーや問屋などを中心に正会員40社、賛助会員83社が参画している。8月からリテール会員の募集も始め、流通10社が会員になっている。各社はAIに何を期待しているのか。田中雄策代表理事に聞いた。

──AIは流通の現場でどのように活用されると考えられますか。

AIが実現できることは大きく分けて買い物客の行動分析にもとづいて効果的な販促を行う「ショッパーマーケティング」、効率よく物流や店舗を管理する「サプライチェーンマネジメント」、品ぞろえや棚割りの最適化を図る「カテゴリーマネジメント」の3つです。目的によってAIの活用法は異なるため、AIの導入を目指す企業はまず、何を実現したいかを決めることから始めるべきだと思います。

──ではまず、ショッパーマーケティングで実現できることは具体的に何がありますか。

ひとつは、棚などに付設したカメラを用い、画像解析を通じて、来店者の行動を明らかにすることです。そうすれば、より来店客のニーズに沿った販促企画を立てられるようになります。

カメラでとらえた来店者の画像からは、年齢や性別などを推測することができますし、店内の動線をデータ化することや、棚の前でどれくらい立ち止まったか、商品を手に取ったか、などの行動もわかります。年齢や性別といった属性ごとに、適切な商品を店内のデジタルサイネージに出し分けるといったことも考えられます。

コンビニはポイントカードの利用率がスーパーに比べて低いですが、個人ごとの購買データを積み重ねられれば、より効果的な販促が可能になるでしょう。

──サプライチェーンマネジメントで実現することは何ですか。

AIで購買にまつわるビッグデータを分析することで、今後どれくらいの来店客が、どれくらいの商品を買うかといった、需要予測が高い精度で可能になるはずです。

需要予測の精度が低いと、売り逃しを防ぐために、商品をいつも多めに手配することになります。しかし、商品が売れ残れば、値引きや廃棄になり、損失を招くというのは変わりません。つまり、予測精度の高低が、損失の多寡に直結するわけです。これは店舗にとって大きな課題のひとつとなっています。

こうした予測をもとにして、発注内容やアルバイトの人員配置を調整すれば、商品のロスや、ムダな人員配置を抑えられます。

これは人手不足に悩むコンビニにとっては僥倖でしょう。コンビニのフランチャイズオーナーはアルバイトを確保できないために、自ら働く時間が長期化している課題があります。不要な人件費を抑え、浮いた費用で必要な時間にコストを集中させることができます。

──AIを用いた需要予測は、どれくらいの精度で可能なのでしょうか。

現時点でも、とある飲食店でAIを活用したところ、どの料理がどの程度出るか、90%の精度で当てられるようになったそうです。

また、AIカメラは品切れや消費期限を管理することも可能です。店内の商品をちくいち確認する作業が削減されます。防犯上の貢献も期待されており、店にとって大きな損害を与える万引きを未然に防ぐことができると思います。

そして、AIによって将来的には受発注や物流面も完全自動化されることが考えられます。

──カテゴリーマネジメントで実現することは。

AIによる購買データの分析を通じ、品ぞろえや棚割りを最適化することが考えられます。

商品には「売り上げは大きいものの、棚から外してもほかの商品が代替するため、全体の売り上げに影響のない商品」と、「売り上げは小さいが、ほかの商品で代えが効かないため、落とすと売り上げに影響を及ぼす商品」があります。

さらに、前者の商品を棚落ちさせてできたスペースに新たな商品を置いたり、店内レイアウトを調整してデジタルサイネージを置いたりすれば、さらなる売り上げアップが望めることでしょう。

また、どういう棚割りをすれば売り上げが伸びるか、これもビッグデータの分析をもとにわかるようになります …

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