ソニー企業は8月9日、ショールームの「ソニービル」(東京・中央)をリニューアルし、「Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)」を開業した。コンセプトは「変わり続ける実験的な公園」。地上部と地下4階からなる園内はほとんどがフリースペースとなっており、期間限定イベントを断続的に開催する予定。ソニー企業の永野大輔社長は「来園者に、常に新鮮な体験を提供しつづけることで、ソニーブランドの本質である"ユニークさ"を体現したい」と意欲的だ。
8月9日~9月24日には、音楽に合わせてローラースケートを楽しめるスケート場を設置する。ほかにも、「沖縄美(ちゅ)ら海水族館」が所有する1000匹の生き物を大水槽で展示したり、開催当日の朝まで出演アーティストを伏せた音楽ライブを企画したりと、実験的なイベントなどをラインナップしている。
このフリースペース、永野社長は「余白」と表現する。永野社長はこう話す。「『余白』は、(一般の)公園において、欠かせない要素。さまざまな人が行き交い、ボール遊びをしたり、座って休んだり。自由な場であるために、『余白』が必要だ。だからこそ、『銀座ソニーパーク』を設計する際も、テナント向けスペースより先に、どこに『余白』を設けるかをデザインした」
一方、入居する企業の顔ぶれもユニークだ。「アヲ GINZA TOKYO」は「銀座ソニーパーク」の地上部に植えられた植物を購入できる生花店。藤原ヒロシ氏がディレクションするコンセプトショップ「THE CONVENI」では、ここでしか買えないトートバッグやTシャツなどを扱う。
ほかにも「トラヤカフェ・あんスタンド」、16種のクラフトビールや季節ごとに変わる12種のデリ・グリルなどを提供する「《BEER TO GO》by SPRING VALLEY BREWERY」などが入る。
地上部にはポップアップストア向きのスペースを設けており、8月9日~9月30日には「トラヤカフェ・あんスタンド」のかき氷店が季節限定でオープンした。
アクセスの良さも公園らしさのひとつだ。「銀座ソニーパーク」の地上部は晴海通り、外堀通り、ソニー通りと、都心部の主要な交差点の角地にある。地下2階は東京メトロ銀座駅と、地下3階は収容台数約800台の駐車場と接続している。
ソニーらしさ全開 建設ラッシュの中「あえて建てない」
「銀座ソニーパーク」の主な目的はブランドの発信だという。永野社長は「ソニーの商品を置いていなくても『ソニーらしい』と言われたら成功」と語る。
1966年から2017年まで営業していた「ソニービル」の位置づけはあくまでショールームで、消費者とソニーブランドの接点は商品やサービス、コンテンツが主役だった。しかし永野社長は、次のように指摘する。「それ(ショールーム)はマーケティングや商品プロモーションの場であって、ブランディング要素は少し薄い」
他方、改装した「銀座ソニーパーク」は「『ウォークマン』や『プレイステーション』と同じ立ち位置」なのだという。
「この公園そのものがソニー商品ということ。『銀座ソニーパーク』を楽しんでもらうことが、すなわちソニーブランドを体験することになる」
「銀座ソニーパーク」が誕生した経緯にもソニーらしさがにじむ。
「2020年の東京五輪に向け、東京のさまざまなビルが立て替えられるだろう。であれば、ソニーは(五輪までは)あえて建てないという判断をした」(永野氏)
2018~2020年まで「公園」を開園し、2022年には「公園」の概念を踏襲したビルが竣工する予定だ。