イヤホン「ambie(アンビー)」は耳をふさがない設計で、イヤホンを着けたまま、まわりの音や声を聞き取ったり、会話をしたりできる音楽体験を提供する製品だ。昨年2月に発売した「ambie sound earcuffs(アンビー サウンドイヤカフ)」は4日で売り切れに。ことし4月発売の「wireless earcuffs(ワイヤレス イヤカフ)」も3週間で在庫切れとなるヒットを見せている。
──「ambie」がヒットに至った要因は何ですか?
潜在的なニーズを顕在化できたことが成功の理由です。音楽の楽しみ方がだんだん変わってきて、音楽を聞くことがライフスタイルのひとつとして、より身近になっているように感じます。音楽を聞くこと自体を目的にする場合はもちろん、作業をしながらBGMのように聞く人も増えてきました。
いまは、音楽CDを購入する人がかなり減っており、CDの生産量は2008年の約2.4億万枚から、17年は1.5億万枚となっています。(1)また、ダウンロード販売も、ピークは09年の約590億円で、17年は約268億円と半減以下に。(2)他方、サブスクリプション(定額)による音楽配信サービスの販売金額は、09年は約11億円だったのが、17年は約238億円と急進し、ダウンロード販売に迫る勢いです。(3)
こうして、音楽の楽しみ方が変わりつつある一方、イヤホンは進化の方向が一定で、音質を良くすることを至上命題に、改善を重ねてきました。もちろん、「いい音で聞きたい」というニーズはこれからも続くと思います。
一方、「ambie」が多くの方からご支持いただけたのは、音楽を楽しみながら外音にも反応できるという、これまでのイヤホンとは異なる切り口で、新たな市場を切り開いたことによると考えています。「ambie」は、音楽を流しながら、周囲の音も耳にすることができます。「好きな音楽を聞きながら、会話や作業もできたら」というインサイトをとらえられたのだと思います。
それを、「聴きながら、聞こえる。聴きながら、話せる。」というコンセプトにまとめました。そして、「音楽を聴く」と「周囲の音を聞く」を両立できることを「ながら聴き」として表現し、認知度向上に努めています。
──「ambie」が誕生した背景を聞かせてください。
ambieは、投資会社WiL(ウィル)とソニービデオ&サウンドプロダクツの共同出資で設立したベンチャーです。「人と音の関わり方を変えていく。」という企業理念を掲げています。実験場としての役割も担っており、WiLが持つオープンイノベーションノウハウと、ソニーの音響技術をかけ合わせた新しい商品として「ambie」を開発する運びとなりました。ユーザーの声を集めながら、1年半かけて開発しました。
デザイン面では、女性ユーザーにも好感を持っていただけるよう設計しています。イヤホンの購入層は男性が圧倒的に多いのですが、女性にも魅力を感じてもらうため、やわらかいカラーと丸いフォルムのデザインにしました。ファッションにも合わせやすいルックスにして、首にかけた時にファッションのワンポイントになるよう配慮しました。触り心地にも気を配り、ユニークな触感なので、機会があったらぜひ、ふれてみていただきたいです。
──反響はいかがですか?
昨年2月9日にコード付きタイプの「ambie sound earcuffs(アンビーサウンドイヤカフ)」を発売しましたが、翌日には人気カラーが売り切れ、発売から4日めには初回生産分が完売しました。
ことし4月5日にはBluetooth対応のワイヤレスタイプとして「wireless earcuffs(ワイヤレス イヤカフ)」を発売しました。初回の反省を生かして生産量を増やしたものの、こちらも初回生産分がわずか3週間で在庫切れになってしまいました。
そして5月10日に販売を再開。ただホワイトカラーが人気でなかなか追い付かず、7月時点では入荷待ち状態になってしまいました。急ピッチで生産の強化をしまして、8月から再び販売に至っております。
在庫切れは話題性があるのですが、機会損失にもなります。需要予測は当商品にかぎりませんが、課題のひとつです。
また、ことし5月10日の販売再開に合わせて大手家電量販店での取り扱いもスタートし、販路を拡大しています …