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顧客維持型へシフト 次代のダイレクトマーケティング

ECとブランドコミュニケーションは一体化する 個人理解と信頼される対話への回帰

資生堂ジャパン

買い物のあり方、企業と消費者の関係は、変わるところもあれば、変わらないところもある。1対1の関係を築くために、本質的に重要なこととは一体何か。資生堂ジャパンで、公式サイト「ワタシプラス」の企画・立ち上げと運営に携わる、同社のEC事業推進部長・徳丸健太郎氏にインタビューした。

総合美容情報を提供し、Eコマースも行う資生堂のWebサービス「ワタシプラス」。

──オフライン、オンラインを問わず、さまざまなチャネルで商品が販売できるようになりました。商品自体の存在感を高めるには、どのようなことが大事になるでしょうか。

昔のカタログ通販ではチャネルが限定されていました。体験の場がはっきり分かれていて、通販は通販、店販(店頭販売)は店販、タッチポイントも限定的。そうした中で、いかにして個々の消費者とやりとりをするか、が至上命題でした。

そこから何が変わったかといえば、タッチポイントが劇的に広がったことでしょう。あらゆる場所で、24時間365日、つながろうと思えばつながれるようになりました。こうした環境で、タッチポイントを統合して、顧客との関係性をいかにマネジメントできるか、関係を保ち続けられるか、がカギとなってきます。

──顧客との関係の構築で重要なことはなんですか。

ひとつは文脈の理解でしょうね。かつては、電話でお問い合わせのあった方、来店された方、実際は同一人物であっても、“異なる人”としてカウントされることが、一般的だったように思います。

しかし、デジタルテクノロジーを活用すると、同一人物だとわかるようになってきている。そうなると、タッチポイントごとに分断したコミュニケーションではなく、同じ人ですから、会話の文脈を維持することが重要になってきます。

それはつまり、消費者起点、消費者目線を持つということです。その上でパーソナライズを徹底できるかという勝負。タッチポイントごとの関係性ではなく、一人ひとりの消費者に対して、生活文脈をとらえる力が必要になってくるはずです。

当社で言えば、自社サイトの行動以外でどのような行動を取っているのかも含めて理解し、ブランドを浸透させていけるか、ということになります。

──コミュニケーションの手法、内容においても、アップデートが求められそうです。

従来型の、特にプッシュ型のダイレクトマーケティングは、企業視点で「いかに買ってもらうか」の売り込みに終始していたように思います。自分たちができていないこともまだ多いのですが、受け取る側の気持ちやメリットを、本当に考えなくてはいけません。

一方的な情報は、興味がわかなければ無視されてしまいますし、そうした情報ばかりを出してくる企業は、いずれ支持されなくなります。だからこそ、先ほどのくり返しになりますが、消費者起点、パーソナライズが重要になってくるんですね。

──ここ数年で、パーソナライズを重視する企業も増えてきました。

そうですね。ただ、我々も含めて、多くの企業ではパーソナライズはできていないと思います。そううたっていても、セグメンテーション(細分化)にとどまっているのではないでしょうか。

その原因は、行動履歴や購買情報、Webサイトなどの閲覧情報、そして性別・年齢、居住地など属性データをもとにして、「この人は、こういう人」といった類推しかできないからです。人間が本来持つ情報の、ほんのごく一部から全体を想像して、「こんな情報がほしいのではないか」と推測しているにすぎません。

ですが、今後は、「インディビデュアライズ(個人化)」を目指さなくてはいけないのではないかと思います。双方向性が叫ばれるようになってしばらく経ちますが、まだ本当の意味で対話はできていない。

個人のことを知るためには、もっと対話する必要があります。たとえば、Aという商品を買った事実があったとしても、それに満足しているかどうかまでは見えませんし、もしかしたら使い方がわからなくて困っているかもしれません。買った後に、ほかに気になっている商品が出てきているかもしれない。

つまり、わずかな行動履歴だけでは、その人のことはわかりません。後ろにある感情や意図を理解しないといけない。「この商品Aを買ってくれ」という押し付けでなく、我々も商品Aのファンだし、お客さまもファン。商品Aの共通のファン、パートナーに近い関係を築くことが重要なのではないかと思います …

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