販売・接客の現場で活躍する、35歳以下のキーパーソンたちに迫る本企画。これからの時代を担う彼ら・彼女らは、いまどんな思いを抱いて仕事に向き合っているのか。今回は、ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS 赤坂店」の支配人、田中宏典さん(26歳)だ。
バーテンダー時代につちかった察知力
「YONA YONA BEER WORKS(よなよなビアワークス)赤坂店」は、2013年10月に開店したビアレストランだ。ヤッホーブルーイングのクラフトビールを常時10種類以上扱う。運営するのは、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」などの飲食事業を手がけるワンダーテーブル。
田中宏典(26歳)さんは、ことし4月から、「YONA YONA BEER WORKS(よなよなビアワークス)赤坂店」の支配人を務めている。
ワンダーテーブルには新卒で入社した。大学生のころ、東京・池袋にあった同社系列のバーでアルバイトをしていたのが、この道に進んだきっかけだった。
「お酒を提供することや、そもそも店舗・空間づくりに携わることはとても楽しい。そんなふうに感じました」と田中さんは振り返る。
正社員となった当初、配属されたのは、東京・表参道にあったハイボールバー「月の兎」だった。現在は「よなよなビアワークス表参道店」となっている。
「バーと聞くと、外からはかっこいい、オシャレなイメージを持たれると思います。自分も学生のころはそう考えていました。でも、実際に働いてみると、それ以上に、とても頭をつかう仕事だと思うようになりました」
たとえば、お客さまが、どのような気分で来店しているのか、雰囲気を見て「いらっしゃいませ」の声を調整する。
「むずかしいのは、『待ってました!ようこそ当店へ!』と言われるのが好みでない方もいるということです。その人にはその人の望む"いらっしゃいませ"がある。それはもう表情を見て、入り口での雰囲気を見て、想像するほかないもので、頭を使いますね」
ほかにもカウンターの一人客に話しかけるかどうか。顔なじみの客でも一線は越えない。ようするに紋切り型の接客では立ち行かない業態だ。
「支配人は、店をつくるのが仕事です。店づくりというのは、料理やお酒、スタッフのマネジメント、接客、全部を演出することだと思います。いらっしゃったお客さま全員に、店自体を好きになってもらいたい。そのためには、個々のお客さまが楽しめるようにできれば」
赤坂店の来店客は、約55%がリピーターで、約5%が常連客、そのほかが新規客といった構成だ。赤坂店はグループ客も多く、リピーターが同僚などを連れて来店することも珍しくない。
「支配人」といっても、田中さんは現場主義だ。「気づいたらいつもフロアにいます」と話す。
「やっぱりお客さまの表情を、それとなく見ていることが多いです。スタッフに声をかけようか、かけまいか、(来店者が)ちょっとキョロキョロしているなど、何気ないしぐさに表れるので」
こうした客を見つけたときは、臆せず声をかけるのだという。
「もうテーブルまで行って、どストレートに尋ねちゃいます …