企業が「語る」のではなく、消費者に語ってもらうコミュニケーションとは──。企業と消費者の価値共創などを研究する大阪女学院大学の青木慶・准教授に解説してもらいました。
ファンによる口コミの影響力
「語らない販促」の有望株のひとつに、ファンによる口コミが挙げられるだろう。デジタル時代のマーケティング・コミュニケーションのあり方を説く、フィリップ・コトラー教授らの『マーケティング4.0』でも、「顧客をブランドの推奨者にすること」を、マーケティングの最終ゴールに位置づけている。
多くの企業が、顧客との共創を重要課題としている。その理由のひとつに、企業からブランドへのコミュニケーション手段が多様化した結果、情報が伝わりにくくなったことが考えられる。
上述の『マーケティング4.0』は、顧客の購買の意思決定に影響を与えるものとして、自分自身の経験/他者/従来の企業による企業発信の情報(従来のマーケティング・コミュニケーション)の三者を挙げる。
中でも、家族(Family)、友人(Friends)、Facebookのファン(Fans)やTwitterのフォロワー(Followers)を総称した「Fファクター」からの情報に対する信頼性は高く、他者からの影響の大きさを指摘する。こうして、企業やブランドにとって、ファンを育てて彼らと一緒にブランドを形成すること、すなわち価値共創の実現が必至となる。
なぜ顧客による推奨は影響力があるのか?
ここで、「Fファクター」による情報が影響力を持つ理由について考えてみたい。筆者はこれについて具体的に確認することを目的に、約2000人のスターバックスコーヒーの利用者を対象に、調査を実施したことがある。彼らが、どんな情報源を参考にし、そこからどんな情報を得たのかを確認した。
その結果、最も顧客の来店を促したのは、店舗や商品自体の魅力など、自らの過去の経験であった。スターバックスのように、リピート顧客が多いブランドでは、必然的な結果であろう。
図は、スターバックスを直近3カ月以内に利用した人の、取得情報(自らの経験を除く)について、まとめたものである。「Fファクター」の中でも、「家族や友人による口コミ」が上位に来ていることが特徴的だ …