近年、宿泊できる施設が話題だ。ただ泊まれるだけでなく、付随する体験も多彩。ブランド価値を伝える接点にもなる。しかし「民泊」が普及し、泊まるだけなら、比較的安価に抑えられるようになった。コモディティ化を避けるアイデアが必要だ。

BOOK AND BED TOKYO コンセプト
提供するのは幸せな寝落ち体験
泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」が、着々と規模を拡大している。2015年11月の池袋本店以降、16年12月に京都店、17年4月福岡店、同年10月に浅草店を開業。新宿にもオープンする。
スタートから2年半、客足は途絶えない。「提供しているのは『幸せな寝落ち体験』。寝たくない、楽しくてしょうがない、そういう体験の果てに、いつのまにか寝てしまっていた、というのが理想。その手段のひとつが本でした。フタを開けてみると好評で、本屋に泊まってみたい、という欲求は普遍的なものだったようです。従来の文脈と異なるホテルという点を楽しんでいただけている」(運営のアールストア)。
BOOK AND BED TOKYO 利用者
既存のホテルの競争に加わらない
BOOK AND BED TOKYO池袋本店の利用者を見ると、若い世代が多く、20歳代~30歳代が85%、40歳代以上は15%。男女比は男性30%、女性70%という状況だ。国内旅行者と訪日旅行客はどちらも33%。国内旅行は都内近郊の客がほとんどで、「お泊まり会」やサードプレイスのような利用も多い。
なぜここまで人気なのか。それは従来のホテルの土俵に上らなかった点にありそうだ。ふつうホテルは、いかにベッド、アメニティ、インテリアを高品質にするか、リゾート性を追求するか、だが、品質に違いはあれど、体験の種類は同じ。「我々の理想は寝たくない、楽しくてしょうがない、でもいつのまにか寝ていた、というもの。その手段が本でした」(アールストア)。実際、「最高な環境での良い寝心地は、ここにはありません」と公言する。

BOOK AND BED TOKYO グッズ
2万円するコラボパジャマが人気
アールストアはネット専業の不動産仲介を手がける。「BOOK AND BED TOKYO」は、実店舗展開を検討していたさなかで始まったプロジェクトだった …