販促の現場を導く、35歳以下の若手キーパーソンにフォーカスする当連載。第11回は、「SUIT SELECT 新宿店」で店長を務める倭村泰貴さん(29歳)。販売員として入社1年めから全社で売り上げ1位を獲得しつづけ、店長としても店舗の業績を伸ばす。そこには、実店舗の価値を突き詰めた、接客と売り場づくりの信念があった。
スーツ販売の魅力は、販売員の力が必要なこと
「SUIT SELECT」はコナカが展開するスーツブランドで、全国に194店舗を構える。提供するスーツは「BLACK LINE」と「SILVER LINE」の2ラインで、価格も2パターンのみと、シンプルさが特徴。20歳代〜30歳代のビジネスパーソンを中心に支持を得ている。
旗艦店のひとつである「新宿店」の店長、倭村泰貴さん(29歳)は、2012年に新卒で入社した。ことし4月で7年めを迎える。就職活動を始めた当初は、とくにアパレル業界にこだわりがあったわけではなかった。しかし、「スーツを着ると、人の印象が変わるのに興味があって。もともとスーツへの憧れがあったのかもしれない」と話す。
倭村さんが就職活動に際し、スーツを初めて買ったのが「SUIT SELECT」だった。そして、そのときに受けた接客を通じ、「スーツの販売には販売員の力が絶対に欠かせない」と感じたことが、入社への強い動機付けとなったという。
入社1年めから連続で社員売り上げ1位を獲得
入社後、最初に配属されたのは、横浜駅東口近くの「横浜東店」だ。横浜駅周辺はショッピング街であり、ビジネス街でもある。店舗には、平日はビジネス層が、休日はファミリー層が訪れる。倭村さんはそこで3年間を過ごし、入社1年めから毎年、店長を除く全社の社員中売り上げ1位に輝いた。
入社直後から大きな実績を納められたのは、「お客さまと、とにかくたくさん話せたから。それが、誰にも負けていなかったのだと思います」と分析する。「たとえば、店頭で洋服を選んでいると、いきなりスタッフから新作を薦められることがあります。しかし、お客さまの求めているものがわからずに、オススメも何もありません。店長としてスタッフを指導する際にも話すのですが、接客では説得力が不可欠です。
たとえば『パンツが破れやすい』という悩みを抱えているのであれば、摩擦に強い生地を薦める。お話を伺って、お客さま一人ひとりの悩みや希望を知り、それに応える提案をすれば信頼感も生まれます」
個々のニーズに沿う提案を意識したことで、倭村さんの接客を毎回希望する顧客もできた。そうした顧客のリピートが、全社での売り上げ1位につながった。
なかには、倭村さんが店舗を異動しても、「倭村さんから買いたい」と異動先まで足を運び、入社1年めから6年ごしの付き合いになる得意の客もいる。
こんなエピソードもある。初めて接客をした際に、「車のディーラーをしているが1台も売れない」という悩みを聞いた。倭村さんは、その人の肌色が暗めのトーンだったことから、表情を明るい印象にする、白を基調としたコーディネートを提案。さらにスーツは、紳士的で清潔な印象を与えるネイビーのものを薦めた。「その方が再び来店した際に、『おかげで営業成績1位になれた』と言っていただけたんです …