住民や企業とつくる クリエイティブな都市
急ピッチで再開発が進む渋谷の街はどう変わるのか。「住民の行動と企業のアイデアを支援していく」と話す長谷部 健 渋谷区長に、将来のビジョンと取り組みについて聞く。
進化を遂げる渋谷
再開発が進む渋谷だが、成長の余地は残されているのだろうか。また、成長のために必要な要素とは。野村総合研究所(NRI)の上級コンサルタント、小林庸至氏が解説する。
シアトルは成長都市というより、もはや「勝ち組都市」と言ったほうが近い。いまも人口の伸びがとても大きく、さらに若い世代が多いのも特徴。20歳代と30歳代で4割弱を占める。大学都市は別として、地方の中枢都市で若い人が集まるのは珍しい。また、人口の6割が大卒で、平均収入が10万ドルを超えるという。アマゾンなどが拠点を置く。
NRI 小林庸至氏:世界に価値を発信しうるポテンシャルがあるように思います。昨年7月、「成長可能性都市ランキング」を発表しました。このランキングは、「多様性を受け入れる風土」「創業・イノベーションを促す取り組み」「多様な産業が根付く基盤」「人材の充実・多様性」「都市の暮らしやすさ」「都市の魅力」という6つの視点、131の指標を用いて総合的に分析したものです。
ランキングは都市を対象としたもので、区単位ではスケールが異なりはしますが、同じ6つの視点で見てみれば、渋谷はかけがえのない魅力、世界に発信しうる魅力を持つエリアではないかと考えられます。
小林氏:ひとつは、多様性を受け入れる寛容さ、でしょうか。寛容度については、区としては国内でもいち早くLGBTのパートナー制度を敷いたのが印象的でした。少なくとも「自治体側のバックアップはある」と言えると思います。もともと、多様な人を受け入れる文化のある街です。それは資産だと思います。
寛容な風土が、都市の発展に寄与するのは、さまざまな人材を受け入れるために欠かせないためです。価値観の多様さ、また、国内人材だけでなく、国外の人材の力を借りることが、イノベーションや成長を促します。よって、前述のランキングでも、寛容な風土を視点に含めました。
もちろん、集まった人が定着するような「都市の暮らしやすさ」「都市の魅力」というものも不可欠ですし、産業が生まれやすいか、それが根付くか、とも相互作用があります。
小林氏:スタートアップ(新興企業)に聞き取り調査をすると、「渋谷・原宿エリア」は、「米国・西海岸の空気を感じる」という声がありました。カリフォルニアのイメージに近いのでしょうか。逆に東海岸は、「大手町・丸の内エリア」だそうです。ニューヨークやボストンを思い浮かべると、似た部分があるのかもしれません。
また、あるスタートアップは、顧客企業は大手町で、自分たちは裏原宿に拠点を置くというスタイルでした。まさに渋谷のコ・ワーキングスペースで起業し、業務拡大で場所を移したそうですが、「渋谷から離れたいと思わなかった」と言うのです …