「国際文化観光都市・渋谷」の実現へ向け、民間企業とも積極的にコラボレーションを推進する渋谷区観光協会。同協会の金山淳吾理事長に「渋谷と観光」について聞いた。
民間企業とのコラボで新たな観光施策を実施
「観光事業」とは、その地域の自然や建造物、食文化、歴史、いま起きている現象などの、観光資源を生かすビジネスです。
渋谷区観光協会は、2012年設立の若い組織です。一般財団法人として、地域にある企業などから少しずつ賛助会費を集め、それを財源として、渋谷区で遊んでもらえる情報を提供することが活動の基本です。
渋谷区に一日に膨大な数の人が訪れていますが、観光地として意識されることは、ほとんどなかったのではないかと思います。しかし、2010年あたりから外国籍の観光客が急速に増え、そうした方々の期待に応えるためにも、渋谷区観光協会が立ち上がりました。
設立当初は、ほかの地域の観光協会と同様に、地図を制作したり、観光案内所を運営したりすることを主な活動としていました。変化のきっかけとなったのは、15年に渋谷区の区長に、広告・マーケティング領域の経験を持つ長谷部健・現区長が就いたことでしょう。協会も方針を転換し、渋谷区の本来の魅力をこれまで以上に引き出すべく、従来の観光案内サービスに加えて、既存の観光資源を改めて磨き上げたり、新たな観光資源を創出したりする企画を仕掛けるようになりました。
ただ、こうした企画を、大きな資本や高度な技術を持たない観光協会の力だけで遂行するのはむずかしいことです。そのため、民間企業とコラボレーションすることで、実現していくことが重要な戦略となります。
たとえば、ハロウィンの時期は毎年、渋谷に100万人以上が集まります。いまでこそ渋谷の風物詩ですが、黎明期は、渋谷区の観光経済に十分にフィードバックできていたとは言えませんでした。また、毎年当日になるまでどのような人がどれほど集まってくるかがわからないうえ、当日は街中にゴミがあふれたり、公衆トイレが着替えのために占領されたり、泥酔した人によって路上が宴会会場のようになってしまったり⋯⋯と数々の課題が生まれていました。
こうした課題を解決しながら、ビジネスチャンスに転換できないかと考えたのが一昨年の2016年のハロウィンイベントでした。サイバーエージェント傘下のネット番組配信サービス「AbemaTV(アベマティービー)」などの協賛を得て、代々木公園で「渋谷ハロウィン横丁」というイベントを開催しました。ステージや屋台ブースを公園内に設け、誘導することで、スクランブル交差点に集まった人を分散させながら、消費の活性化を促しました。
観光資源のなかからチャンスを見つけ出し、民間企業とともに事業化する。それによって街全体の「メディア力」を上げていこうと考えているのが、渋谷区観光協会なのです …