2016年にスタートしたバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」。初年度の平均観客動員数3009人でリーグ6位に入ったのが、横浜ビー・コルセアーズだ。チームとしては、B2(下位リーグ)降格の危機に見舞われ、入替戦の末に残留を決める苦しいものだったが、B12年めとなるシーズンも、17年12月末時点で2979人の平均観客数を記録し、安定した集客を続けている。彼らはいかにしてアリーナに「ブースター」(ファン)を集めているのか。
ストロングポイントを明確に認知を高める
横浜ビー・コルセアーズ(通称ビーコル)は2011年に創設され、bjリーグ参入2年めにして優勝という快挙を成し遂げたが、経営面では非常に厳しい状況に置かれていた。
現在、クラブ運営会社「横浜ビー・コルセアーズ」で代表取締役CEOを務める岡本尚博氏は、bjリーグのチーフプロデューサーとして、オールスター戦やファイナルをプロデュースしてきた。2012年のオールスター戦ではさいたまスーパーアリーナに1万4011人を集客。岡本氏は、経営危機に見舞われた当時の運営会社、横浜スポーツエンタテインメントを立て直すため、bjリーグから派遣されたことをきっかけに、クラブに携わることとなった。
まずは定期的に開催されていたブースター(ファン)ミーティングでアンケートを行い、多くの人が評価しているロゴとチアリーダーズ「B-ROSE」をクラブの強みにすることを決めた。ロゴは人をモチーフにしており、バスケットボールを取り入れている他チームのものとはひと味違うところが特徴だ。「B-ROSE」は岡本氏も「最初にビーコルを見たときからクオリティが高いと思っていた」と言うほど、パフォーマンスには定評があった。
成績については「当時はbjリーグそのものの認知も進んでいなかったので、バスケットボールを知らない人に向けては強みにならないと思った」と話す。それよりも「プロ」ということの方が価値を届けやすいと考えた。こうして「ロゴ」「B-ROSE」「プロ」を強みとしてアピールを強化する方針を定めた。
ビーコルは横浜文化体育館(文体)と横浜国際プール(国際プール)を中心に、次いで平塚総合体育館(現=トッケイセキュリティ平塚総合体育館)や横須賀アリーナ、スカイアリーナ座間(座間市立市民体育館)などで試合を開催していた。文体、国際プールは会場使用料が高く、経済的負担が大きかった。そこで、開幕戦など一部の試合以外は会場コストが安く、施設を管理する自治体も興行の開催に比較的協力的な平塚や横須賀などで行った。
これにより試合開催日に合わせた告知は、該当エリアで地域住民をターゲットにできるので、認知にかかるコストが抑えられた。横須賀や座間にはDeNAベイスターズや横浜Fマリノスといった、ほかのプロスポーツはなく、強みのひとつである「プロ」という言葉に価値を感じてもらえることも利点だった。
また、バスケットボール選手は身長が高く、アイキャッチ効果も高い。これを最大限に生かすべく、さまざまなイベントに選手やスタッフ、チアリーディングチーム「B-ROSE」を派遣し、存在をアピール。地道な取り組みは着実に成果を残し、bjリーグ最後のシーズンには平均観客数1820人と参入初年度の倍近くに伸びた。
チームを「キャラ立ち」させるブランディング
B.LEAGUE1部、B1は、5000席以上の観客席設置ができるホームアリーナで、年間80%以上の試合を開催しなければならない。これは、国際プールで大半の試合を行わなければならないことを意味していた。国際プールの所在地である都筑区と、隣接する港北区、緑区の人口は約70万人。
岡本氏は「人口は島根県に匹敵する。間近に横浜スタジアムがあり、マリノスタウンも近かった文体とは違い、この3区には先行者はなく、認知獲得は必要だった」と話し、イベント参加などの普及活動や、自治体や商工会議所や青年会議所など地元の各種団体と交流は行っていた …