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SPORTS TEAMに学ぶ集客術

地域に根づいたフレンドリーなスタジアムを DJチャス。のフィールド・オブ・ドリームズ

ファイターズ 鎌ケ谷スタジアム

プールに砂浜、田んぼでの田植え体験やプロレス。これらはアミューズメントパークのイベントではない。すべて北海道日本ハムファイターズのファームチーム(二軍)の本拠地、ファイターズ鎌ケ谷スタジアム(千葉県)で実施されたイベントだ。育成や調整を主な目的とするファームチームが、野球と直接関連のないイベントを開催し、多くのファンが来場している。その背景には、鎌ケ谷のファイターズが目指す「ボールパーク化」構想があった。

鎌ケ谷スタジアムは2013年、プロ野球12球団のファーム(二軍)球場で初めて、LEDディスプレイのフルビジョンスコアボードを導入した。サイズはタテ約7メートル×ヨコ約20メートル。スコアボード機能のほか映像を流すことができ、試合以外でも映画祭などを実施している。

ボールパーク化の始まりはのぼり300本を立てることから

北海道日本ハムファイターズが鎌ケ谷ファイターズスタジアム、通称「鎌スタ」の集客を本格的に注力しはじめたのは2007年のこと。鎌スタは、1997年に球団(当時は日本ハムファイターズ)が二軍の球場と練習場、選手寮を移転し、本拠地となった。

球団は「スポーツコミュニティの実現」という理念を掲げている。鎌ケ谷移転10周年を迎え、あらためて鎌スタのあり方を問う中で、その理念を「ボールパーク化」構想として具現化しようと考えた。

構想を推進する役割を担ったのは、2006年に鎌ケ谷事業部チーフディレクターとして着任し、現在は事業統轄本部首都圏事業部のディレクターを務める中原信広氏だ。

中原氏がボールパーク化を進めるうえで意識したポイントは4つ。まずは本来の目的でもある選手の育成。次に興行と地域密着、最後が顧客満足だ。プロスポーツとしては当然のポイントだが当時のファームにそういう視点はなかったのだ。

しかし、当時の鎌ケ谷の町には野球の気配はなかった。「最初は違っていたのかもしれませんが、球場周辺にファイターズのファの字もない、本当にここにファイターズがあるのかと思うほどでした」と中原氏は振り返る。

最初に手を付けたのは、東武鉄道野田線の鎌ヶ谷駅周辺に「のぼり」300本を設置することだった。まずは鎌ケ谷にファイターズがいることを知ってもらう必要があった。当時は地域の球団に対する認知度が低く、のぼり設置には苦戦した。断られるというよりも、そこにのぼりを置くことの必要性の理解を得るのがむずかしい。「断られるというよりも、ピンと来ていないようでした」(中原氏)

ファイターズの北海道移転も経験していた中原氏は、それでも地道な活動を続けた。「北海道でも2年半くらいは、どこへ行っても『日ハム、何それ』といった状況でした。鎌ケ谷も最初はそういうものという意識で地域を回りました」

「鎌スタ☆祭」に5000人が来場、追い風が吹きはじめる

当初は町と一緒に取り組むという形が見えなかったが、徐々に地域の意識も変わっていく。2006年の日本ハムファイターズ優勝時、鎌ケ谷市役所の駐車場でパブリックビューイングを実施。「集まった500人ほどの周辺住民と一緒に胴上げシーンを見た光景はいまでも忘れられない」と中原氏は振り返る。

2007年の7月に開催した「鎌スタ☆祭」は、さらに町を大きく動かすイベントとなった。「試合だけが盛り上がるのではなく、商店街のお店や住民の皆さんにも来ていただく『町のお祭り』を意識して作りました」(中原氏)

宣伝にはポスターを制作し、町中に配布。千葉県内を中心に放送するFMラジオ局ベイエフエムの協力も得て、告知を行った。ポスターは、イベント時には常に制作し、告知の有効な手段としている。「いまの時代ポスターなんて、という人もいますが、知ってもらうためには必要。ポスターが変わることは、イベントが新たに始まるのろし。『何かあるぞ』と気づいてもらう雰囲気作りです」(中原氏)

祭りでは、球場の正面広場を開放し、地元商店や希望者が出店を開いた。鎌ケ谷スタジアムの収容人数は2400人。現在でこそ同スタジアム開催を含むイースタン・リーグの主催試合では1000人を超える平均観客数を集めるが、当時はまだそこまでではなかった。その鎌スタに5000人を集めることに成功した …

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