コモディティ化が課題となりつつある下着業界。必要になったとき、買うときだけでなく、ふだんの生活から、あるいは購入後にも意識してもらおうと、ワコールはオンライン・オフライン双方で趣向を凝らした情報発信の場を用意している。
ふだんの生活と購入後の接点強化に力を注ぐ
「スマホが普及して以降、すべての情報が競合です」─ワコールの松本禎之氏(WEB・CRM企画課課長)は、こう話を切り出した。消費者との接点で、どのようにコミュニケーションすれば、購買につながり、その後の関係を長く保てるか。業種業態を問わない課題だ。
とくにスマートフォンを持つことが一般的になった結果、ほぼ丸一日、常に情報に接することが当たり前になった。一方で、長くじっくりと情報に触れるというよりは、スナック感覚で、好きな情報をつまみぐいできるようになった、ということでもある。長くじっくりとひとつの情報に触れる機会はほぼなくなったのではないか。
「少しでも多くの時間をワコールに割いていただく。同じ時間で少しでも、いかに深くブランドにまつわる体験をしていただくかが課題かと思います」
下着の年間の購入額は、一般のアパレル製品に比べて低い。「意識的には、下着は、ファッションカテゴリーではなく、日用品カテゴリーに入っているお客さまが多いのではないか。デザイン面で選ぶ方もまだまだいるが、トレンドとしてはシンプル志向。コモディティ化が進んでいるように感じます。残念ながらふだんから意識に上るようなタイプの商品ではないのです。だからこそ、下着の“脳内シェア”を、どういうふうに上げていくかが課題」
ワコールで消費者アンケートをとっても、いま着用している下着のメーカー名を想起できない人が多いという。「これは便利でどこでも買えるようになったことと二律背反的。苦労して手に入れたものには愛着がわくが、逆にそうでないものへの関心が薄れる」
下着を意識するタイミングは、たとえば、布地が劣化したなどの差し迫った需要が発生した際。店頭に向かうか、あるいはWebなどで調べ始める。ようするにいきなり購入か、それともリサーチか、だ。
直接的に購買機会を増やすなら販売チャネルを増やすこと、リサーチの受け皿を用意することが挙がる。たとえば「店舗検索(ショップロケーター)」では、約60のブランドごと、約4500店舗を検索できる。サイト訪問者にサイト訪問者に店舗のセールやイベント情報を表示する仕組みもある。
加えて松本氏が着目するのは、「リサーチ前(=日常生活)」と、「購入後」だ。
「購入後でも、洗い方や着用の仕方、収納の仕方、さらには捨て方と下着にまつわる情報は多いのです。とくに女性なら、ブラジャーに金属が用いられていたりして、分別して捨てなければなりません。また、心理的にも、そのままは捨てにくいもの。そこで当社では11月〜3月末にかけ、店頭でリサイクルバッグを配布し、下着を回収してリサイクルする施策を行っています。2016年11月〜17年3月の5カ月間では約28万2700枚を回収しました。これも、購入後の接点のひとつです」
また、「MyWacoal(マイワコール)」という会員組織も整備した。直営店やEコマースサイト共通で、200万人規模の顧客基盤となっている …