「ピンクのバス」で知られる高速バス「WILLER EXPRESS」や、食と絶景を楽しむ「レストランバス」、地域鉄道「京都丹後鉄道」など、革新的な移動サービスを手がけるWILLER。2018年春には、16年9月のベトナムの子会社設立に続き、台湾にも会社を立てる。世界進出についての考えを村瀬茂高社長に聞いた。
いかに日本国内だけでモノを見ていたか
ここから10年間で、世界規模で生じる問題と、日本国内の問題があります。これからウィラーは、グローバルでは世界共通の課題を解決するサービスの開発を、日本では、日本独自の課題を解決するサービスの展開を進めようと考えています。
私たちとしては、どうしても日本の課題──超高齢化や人口減少など──に目が向きがちですが、実際には、グローバル規模で起きる課題も理解しておかないといけません。
世界規模の問題は、技術革新などで引き起こされます。「新しいテクノロジーについてのニュースは毎日、国内でもとりざたされている」という声もあるかもしれません。たしかに新素材やロボット、人工知能といった話題には事欠きません。しかし、むしろ世間でそう言いながらも、のんびりしているのが日本という印象です。
ウィラーが属する移動業界で言えば、米国発の「Uber(ウーバー)」が象徴的です。個人事業主的なドライバーをネットワークし、スマートフォンアプリで配車するサービスですが、すでに後発のサービスが増えています。タクシー事業者がどんどん「Uber」の運転手に変わっていく。
移動業界では、こうした技術革新が引き金となってさまざまな働き方を変えてしまうとにらんでいます。従来ビジネスの7割は変わるのではないでしょうか。
日本は法規制が整備されているので、安全性などがきちんと守られている一方、革新的な事業が生まれづらい側面もあると思います。そしてその分、世界の動きに当事者意識を持ちにくくもある。
だからこそ、グローバルな変化の中に、日本の課題を合わせて考えることが非常に重要です。そうでなくては、世界中で当たり前のサービスができたとき、遅れを取ることになる。現在進行中の事象について、将来、日本で許認可が下されるかどうかは別として、注目は続けなくてはならないと考えています。
私も2016年1月ごろから、ほぼ1週間おきに日本・海外・日本・海外と、半ば意地のようなところで現地に赴いていました。それでいままで、いかに日本国内だけでモノを見ていたかを思い知りました。
日本がダメだというわけではなりません。個人的には日本は住むにはベストの国です。ただ、事業の流通性がないと言いますか、日本国内で日本市場のインサイトを叶えるサービスが、そのまま世界に通用しないという実態はあります。
だからといって日本のビジネス形態を世界に合わせるべき、ということでもないのです。むしろ文化の独自性を保ったまま、日本は日本で進化するほうがいいと思います。日本独自の課題の解決に集中することで、そのサービスの独自性も高まる。それが日本でしか体験できないものになる。ひいては、外から日本を見たときの魅力につながることもあるでしょう …