ことしの夏から秋にかけては、日照不足や台風が続き天候に恵まれなかった。苦戦を強いられた飲料ブランドは少なくない。キリンビバレッジの緑茶飲料「生茶」もそのひとつだが、1月~10月は107%で推移した。底堅くブランドを支えた施策を振り返る。
体験型施設でブランドへの好意高める
「2016年が製品を進化させた年だとすれば、2017年はコミュニケーションを進化させた年」─キリンの名郷根宗氏(マーケティング部商品担当主任)は、こう口火を切った。キリンビバレッジは7月20日、緑茶飲料「キリン 生茶」の17年の年間販売目標2840万ケースを、2920万ケースに上方修正した。昨年実績より300万ケース上回る目標。16年のリニューアルを経て、ことしは中味を洗練させた。パッケージも好評だ。
「コミュニケーションの進化の年」と名郷根氏が話すように、ことしの「キリン 生茶」は、さまざまなプロモーションを展開してきた。メインは、春ごろから進めたクローズドキャンペーンと、夏にオープンした期間限定の体験施設だ。
2017年1月~10月の売り上げ(出荷)は前年比107%で推移した。ことしは夏季の日照時間が記録的に少なく、飲料は苦戦を強いられた格好だが、「生茶」は前年比増を堅持した。その背景には、こうしたプロモーション施策がある。
体験型施設は「お茶のいろは by Namacha」と名付け、7月21日に開館した。営業するのは土曜日・日曜日・祝日のみだが、10月時点で来場者数は4000人を超えた。1日に平均160人~170人ほどが訪れ、クイズに答えたり、お茶を飲み比べたり、茶葉ができるまでを学んだり、といった体験プログラムを40分ほどかけて行う。入場料は800円(税込)。ただし小学生未満は無料。
来場者は20歳代~30歳代の人が多い。東京・原宿という場所柄か、女性の姿も目立つ。夏季には子ども連れで来場する人もいた。
「インターネットで何でも知ることができる、と思われている世の中で、実際に体験することの価値が増している。行動を伴うと記憶にも残りやすく、消費者とブランドとの距離を縮めるには、体験の場を用意することが重要だと考えました」(名郷根氏)
アンケートほかの追跡調査の結果、来場者は「生茶」の購入率が全体平均より高くなり、ブランドに対する好意度も上がっていることがわかった。
「課題はオンラインでの波及。距離的な問題などで来場できない人が、『お茶のいろは』の話題を見聞きした際に、好意度が上がるようにはどうすればいいか。オンラインと、実体験をリンクさせるべく、試行錯誤しています」(名郷根氏)
まずは来場者が、ソーシャルメディアなどに投稿したくなるような動機づけが必要だ。用意した体験プログラムはオープン以降、マイナーチェンジを繰り返している …