2017年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補にもノミネートされ、若者の間で頻発に使われる"インスタ映え"。写真共有サービスの名称をもじった、見栄えのする投稿を指す言葉だ。こうしたソーシャルメディアの発想を、POPに生かすことはできないか。"自撮り女子"を自称するりょかち氏に、若者目線からPOPの意義について語ってもらった。
コスメやお菓子、飲み物など日常消費するモノに関する情報を、ソーシャルメディアを通じて収集することは、近年一般的になりました。
私はIT企業で働く25歳の女性で、プライベートでインターネットカルチャーについての電子書籍も出版したほどソーシャルメディアが大好きです。そんな私だけではなく、まわりにもソーシャルメディアを活用して日々のお買い物を楽しむ友人たちがずいぶんと増えました。
わたしたちは、たとえそれが単価の安いものだとしても、毎日使うものについては詳細にソーシャルメディアでリサーチしてから売り場に向かいます。昔に比べて、売り場にたどりつくまでのプロセスが、買うものを決定するにあたって重要になっている時代なのです。
ですが一方で、そんな時代にも思わず「グッとくる」POPがあります。むしろソーシャルメディアネイティブにこそ、深く届くPOPも存在している。わたしたちはいまだに、「買う気なかったけど買っちゃった~」を繰り返して日々を過ごしているのです。
インターネットの情報が大量にある現代だからこそPOPは情報の「キュレーションメディア」であるべき
まずお伝えしたいのは、現代のPOPは「キュレーションメディア」であってほしいということです。
インターネット上には、商品のレビューサイトが数多くあり、ソーシャルメディア上では口コミがあふれていて、さまざまなところに大量の商品レビューが存在します。私たちは複数の情報源を行き来しながら商品にまつわる情報を収集していきます。
だけど正直、それはとても面倒なのです。確かに、こだわりの化粧品なんかを探したいときには一つひとつのレビューを一生懸命チェックして店頭に出向くでしょう。ただすべての商品にそんなことはしていられない。だからこそ、店頭で見かけるPOPにはそんな情報がキュレーションされていてほしいのです。
例えば、よくある「ベストコスメアワード1位」という内容や、「楽天ランキング1位」といった人気プラットフォームでの人気を示す指標。あるいは「ソーシャルメディアで話題」「◯◯さんもInstagramに掲載」「ViViで紹介されたアイテム」など、メディアでの露出に関する情報をPOPに入れることで「この商品は人気である」ということがわかりやすくなります。
先述のとおり私たちは事前にインターネットでリサーチをした上で店頭に出向きますが、一方で、店頭で商品を見ながらインターネットを介してリサーチすることもあります。インターネットで話題になっていたり、また高評価な商品であれば、買ってもらうためにそうした情報を「検索」させない手はありません。
膨大に存在するインターネットの情報に対して、「いまは情報がたくさんある時代だから」と引け目を感じる必要はありません。むしろ膨大な情報を活用して、自分のお店に来てくれるお客さんが思わず「検索」し、検索結果によってその商品の価値を感じざる情報をキュレーションする。
そんなPOPを見かければ、わたしたちソーシャルメディアネイティブ世代はついつい立ち止まり、自分が信用しているサイトの情報が後押しとなって、その商品を買ってしまうことでしょう。
万人受けは狙わずに自分のお客さんを狙い撃ちする表現を
ソーシャルメディア時代にリアル店舗に訪れた変化といえば、買う側が商品に関する大量の情報を取得できるようになってしまったことがあげられますが、そもそも、Amazonが日常的に利用されるようになってからというもの、若者たちがどこかのリアル店舗でモノを買う機会自体が減ってしまっているように思います。
私自身も、社会人になってから、ほとんどの買い物をAmazonでするようになりました。
何しろ、Amazonには全国のどんな商品でも販売されています。「シャンプー」というワードで検索すれば、約4万件の検索結果が出てくる。とにかく、何かほしいものが決まっている人にとっては、必ずと言っていいほどインターネット上で買うことができるし、複数の候補から商品を選ぶにあたっても、店舗よりも幅広い商品から選び取ることが可能です。
しかし、だからこそ店頭に存在するPOPは、「買うものがなんとなくしか決まっていない人」をターゲットとし、万人受けではなく、「自分のお客さんを狙い撃ち」することで差別化することができるのではないでしょうか。
少し話は変わりますが、2010年から爆発的な人気を誇っているアイドルグループAKB48もまた、数多くの「類似商品」が一同に並ぶ中で競争を強いられています。
そんな彼女たちが行っているのは「個性を主張する」こと。もちろん、王道のアイドルキャラを貫く人もいますが、歌とダンスの実力でファンを魅了したり、バラエティ力でその魅力を表現したり、あるいはニッチな趣味でその領域のオタクと呼ばれる人たちの注目を集めるなど、さまざまな方向性での魅力訴求をストイックに発信しています。それにより、「アイドルにたまたま興味を持った人」を自分に注目させて虜にしているのです …