花王の掃除用品「クイックルワイパーシリーズ」は、パッケージそのものをPOPのようなデザインにすることで、売り上げを大きく伸ばしているという。「店頭におけるPOPの管理はメーカー側ではコントロールしきれないからこそ、パッケージをPOP化させるという発想に至った」と話すホームケア事業グループの加藤安友実氏に、その極意を聞いた。
「どんな商品なのか」が一目でわかるデザインに
──「クイックルワイパー」の担当者として、店頭でのPOPの活用をどのようにとらえていますか。
メーカー側でPOPを作っても、店舗でつけてもらえなかったり、プライスカードと重なってしまったりして、広告として一律に機能しないことも少なくありません。そこで「クイックルワイパー」では、「いっそPOPを兼ねたパッケージにしよう」と考えてパッケージをデザインしています。もちろん、POPも制作していますが、「定番売り場に販促物は付きにくい」という前提に立ち、パッケージだけでも商品の魅力が伝わるようにしています。
また、棚数が限られる店舗では、必ずしも希望通りに陳列していただけるわけではありません。そのためパッケージの表だけでなく側面にも必要な情報を厳選して記載し、平積みの場合でも「どんな商品なのか」が一目でわかるデザインにしています。
クイックルは実は発売時から、パッケージのサイズにもこだわってきました。日用品の棚はあまり高くないので、クイックルワイパーを組み立てた形では陳列できません。そこで、本体を日用品売り場の棚の高さに収まるよう、組み立て式にして発売しました。
棚に入りきらないと日用品ではなく、ほうきやモップなどの掃除道具用品売り場に置かれることになります。そうすると、日用品ほど頻繁に購入する売場ではないので棚の前に来る人自体が少なく、販売機会が減ってしまうのです。
──POPを活用する際は、どうすれば店舗に設置してもらえるのでしょうか。
その販促物があることで商品特長を実感できるような販促物は、消費者にも、お店の方にも、受け入れ性があると思います。たとえば、クイックルのハンディシリーズのふわふわシートの店頭見本のように、触感に特徴があって、触ることでその効果をわかっていただけるような販促物は設置してもらいやすいと思います。
売り場の棚を拭いて掃除するお客さまもいらっしゃって、流通の方から「たくさんのお客さまが触って汚れてしまったので、新しいものに替えてほしい」と言われたりもします。
また、商品力があるからこそ実物をそのまま展示することもあります。ハンディタイプの伸縮型ワイパーを展示したところ、実際にお客さまが手に取って伸ばしたり縮めたりして「これだけ長さを変えられるんだ」と実感していただけました。商品に触れるほど購買意欲も高まりやすくなるので、できるだけ触りたくなる販促物を作るようにしています。
使用シーンを具体的にイメージできることを意識
──たとえば、POPによって課題を解決できた事例はありますか。
「クイックルワイパーシリーズ」は数種類展開しているので、全体的なデザインを統一しつつ、お客さまが店頭で比較・検討しやすいようにしています。そのようにしたきっかけは、2016年に商品の大改良をする際、シリーズ内の違いを理解してもらえていないのではないかという仮説があったためです。
とくに違いを明示しきれていなかったハンディタイプの2種類を大きく変更しました。パッケージ表面を存分に使って、対象場所や使用方法を見せ、通常タイプと伸び縮みタイプの違いをわかりやすく伝えました。
それまでのハンディ伸び縮みタイプのパッケージは、最大の特長である「使うときに長くのばせるということがうまく伝えられていませんでした。ハンドル部分の長いものと短いものが2種類あるように見えていたこともあったようです。そこで、使うときに長く伸ばして、手が届かないところの汚れもとれることが一目で伝わるよう、ひとが使っている場面のシルエットをより印象的にパッケージに導入しました。
写真ではなく、はっきりとした黒いシルエットを使うことで使用シーンをより具体的にイメージできるようにしたんです。このパッケージに変えたことも要因となり、売り上げが前年比2倍にまで跳ね上がりました ...