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化粧品の買い方を変革するバーチャルメイクアプリ

試してもらいさえすれば、必ず商品の魅力は伝わるのに──プロモーションに携わる誰もが一度はこう考える。しかし、消費者にとって手軽にトライできる商品ばかりではない。化粧品もその一つだ。メイクの特性上、多くを試すことがむずかしく、結局無難な商品を選びがち。逆に言えば、気軽に好きなだけトライできるとしたら、もっと売れる商品もあるかもしれない。突破口となりそうな手法がある。バーチャルメイクアプリだ。

百貨店や化粧品ブランドが相次いで導入

「思ってたより、似合うかも」──。拡張現実(AR)技術を活用し、じぶんの顔に実際にメイクしたかのようなシミュレーションができるアプリと、化粧品売り場・ブランドのコラボレーションが相次いでいる。

アプリの名称は「YouCam メイク」。10月には、より現実に近いメイクを再現する「3D(3次元)−AR技術」を開発、肌の動きや、頭の上下左右の動きに反応し、立体的なメイクをリアルタイムで施せるようになった。

ことし4月には大型商業施設「GINZA SIX(ギンザ・シックス)」内の「コスメデコルテ」(コーセー)旗艦店や、同じ「GINZA SIX」内のハーバー研究所の店舗が採用した。6月には商業施設「銀座インズ」のセミセルフ型の化粧品セレクトショップ「フルーツギャザリング」(運営=エフ・ジー・ジェイ)、7月には阪急うめだ本店、8月には恵比寿三越と、導入が相次いでいる。化粧品ブランドは国内で20以上が参加する。

さらに阪急百貨店は8月、「YouCam メイク」上に、阪急オリジナルの「メイクルック」(メイク用品を予め組み合わせたセット)を用意。そして、公式Eコマース(EC)サイト「Hankyu BEAUTY」にも取り入れた。

店頭向けの「コンサルテーションモード」を、モバイル向けWebサイトなどでも使えるよう開発したサービスで、国内初の導入。「Hankyu BEAUTY」で化粧品を購入する前に、スマホを通じて自分の顔で色味などをシミュレーションできる。

店頭とEC双方で利用できるブランドは、クリニーク、エスティ ローダー、ボビイ ブラウン、イヴ・サンローラン・ボーテなど。

「アプリ自体が、集客の求心力にもなっている。商品を選んだり、試したり、雑誌やWebと並ぶメディアの1つとして情報収集の手段となっているのではないか。オンラインでの導入も、リアルとバーチャルのかけ算と考えるので、相乗効果で新たな体験を提案できていると思う」(阪急百貨店)

月間利用者数は40万人 試行は月に2500万回

開発したのは、パーフェクト(東京・港)。2015年に台湾のソフトウエア開発会社サイバーリンクから分社化。サイバーリンクは映像処理技術などに強みを持ち、パソコンメーカーなどに技術提供している。

「YouCam メイク」を世に出したのは分社する前の、2014年8月のことだった。その数カ月前にもスマートフォン向けの写真撮影アプリを出し、世間の「自撮り(セルフィー)」ブームの追い風を受け、ヒット。同アプリの反響を受け、「メイクをしたかのような画像加工もできるのではないか」と、開発したのが「YouCam メイク」だった。パーフェクトのCEOを務めるアリス・チャン氏が、「徹底的に現実に近いバーチャルメイクアプリに」と、開発を後押しした。チャン氏本人も、化粧品の熱狂的な愛用者という。

「YouCam メイク」は本来、企業向けではなく、一般消費者向けのスマホアプリだ。じぶんの顔を撮影し、アプリ上でアイシャドーや口紅、ファンデーションなどを選びながら、メイクを再現できる。国内での月間利用者数は40万人、月間セッション(一定期間ごとのアクセス数)は230万回に上る。

現在では、著名ブランドがタイアップし、実際の商品の使用感を再現できるようになっている。アプリ利用者が、メイクを試した回数(タッチアップ数)は、全ブランド合計で月間2500万回。中には月間100万回を超える人気のブランドもあるという。メイクを試す画面からは、その商品を購入できるEコマースサイトへアクセスができ、ブランドあたり月間平均で約1万回の送客があるという。

積極的なトライアルで購入チャンスを増やす

販売の現場では、主に「YouCam メイク」を商品のトライアルに活用している。化粧品の特性から、使い慣れた商品ならまだしも、新商品をEコマースで購入するのはハードルが高い。試せる場としての店頭の重要性は変わらないが、1品1品を試す時間が限られる上、トライアルでもふだん使い慣れない色などは手が伸びず、結局、冒険せずに終わってしまうことも珍しくない。

一方、AR技術を用いたメイクのシミュレーションであれば、失敗を恐れず、また落とす手間もなく、気になる商品を好きに試せる。試してもらえる回数を増やすことは、ブランドにとって購入機会に直結する要素だ。「イベントで接客をしてみるのですが、実際に、『この色、いい!』とか、『(思ったより)似合う!』といった声を、よく聞きます」(パーフェクトの磯崎順信社長)

美容部員を対象にしたアンケートによると、「足を止めてもらえる人がほとんど」「(『YouCam メイク』の)操作の仕方によって、ほしいものや、悩んでいることが手に取るようにわかるようになった。声をかけやすい」といった声があった。

さらにカウンセリングの順番待ちをいとう人を取り込めたり、試せる化粧品の数が増え併売率が上がったり、といった効果があるようだ。カウンセリング販売では、いわゆる「メイクチャート」と呼ばれる、顔の輪郭に合わせたメイクのイメージ図を来店者に渡すことがあるが、それも「YouCam メイク」で撮影したじぶんの顔写真で受け取れる。じぶんの顔写真は捨てづらく、持ち帰ってもらえる確率が上がる。

写真データ自体は、24時間以内で自動的に消え、さらにサーバーからは最大72時間で完全に削除される。

「フルーツギャザリング」のような、セミセルフタイプの売り場では、ブランドをまたぎ、併売率向上の効果も見込める。「現場で、10歳代~20歳代の来店者が使っているのはもちろん、『お母さんにも使ってほしい』といった声がありました。アプリ内で、すでに持っている商品と組み合わせて、シミュレーションすることもできるので、より購入しやすくなるのではないかと思います」

また、ポップアップストア(期間限定店)では、品揃えの幅を増やしづらいこともある。バーチャルメイクアプリを活用すれば、店頭にある以上の商品を紹介することもできるだろう。

一方、店頭での「YouCam メイク」の課題は、購買データとの紐づけができていないこと。つまり、店頭で「YouCam メイク」を試した人が購入に至ったかの追跡が、オンラインではできていないのだ。

アプリ自体のID登録はあるものの、「それを各ブランドのIDや、店舗のカード会員情報など結びつけるのが、現状では難しい。技術的には可能ではあり、本来であれば顧客関係マネジメント(CRM)での有効活用も考えられるが、ひとつの課題。貴重なエンゲージメント(関与度)データをどのように活用していくかに今後の開発のフォーカスを当てている」。

「バーチャルメイク」から憧れの人のコピーメイクへ

先月、2500万ドルの資金調達を済ませ、さらにAR技術とAI技術の開発・精度向上を加速する。直近では、「絶対値を計測する技術」に注目する。この技術を活用すると、たとえば、従来のAR技術では、メガネを顔に合成すると、顔幅に合わせてメガネのサイズが変わってしまい、実物と異なってしまう。

一方、絶対値が計測できると、顔幅を推計し、メガネのサイズとのズレを出せるようになり、試着時の見た目をより正確に表現できるのだ。メガネのほかにもアクセサリー類や帽子などにも応用が考えられるという。

次の課題は、パーソナライズされたカウンセリングだという。店舗のデバイスでも、アプリでも、誰がどのような色やブランドを試したか、といったデータを蓄積している。年齢や位置情報などと組み合わせれば、勧める商品の精度が増す。

さらに、近日中に公開予定の新機能がある。題して「AIルックトランスファー」。ポスターや雑誌広告などのモデルのメイクを解析し、そのメイクを「YouCam メイク」上で再現するというものだ。

ブランドや雑誌などとのタイアップで、もともとビジュアルに商品を登録できるほか、画像解析をして近いメイク用品を割り出すこともできる。

こうしたテクノロジーの活用について磯崎氏は、「定着は始まっていると思います」と話す。「何でも技術はそうですが、ARも標準になるのではないでしょうか。悪く言えば陳腐化する。新鮮さがなくなったときにどう対応するか。『YouCam メイク』では、エンターテインメント性がカギになると考えています。メイクがもちろんメインですが、特集コンテンツなども柔軟に、トップページのカスタマイズ、読み物などなど」

「『YouCam メイク』はメディアビジネス」だと磯崎氏は話す。「いわば、利用者の規模、利用する時間が広告主企業に対する商品。我々のようなテクノロジー企業は従来、開発した技術のライセンスなどを販売してきましたが、『YouCam メイク』はメディアとして、より大きく育てていきたいと考えています ...」

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