「ファッションデジタルストア」を標榜する「GU(ジーユー)横浜港北ノースポート・モール店」。目玉は、商品情報を鏡面に映し出す「オシャレナビ・ミラー」と、ショッピングカートにタッチパネルが付いた「オシャレナビ・カート」。オンラインストアさながらに、コーディネート提案や購入者の評価が見られる設備を整えた同店に、その思惑を尋ねた。

店頭プレゼン力を強化した新店舗
「GU(ジーユー)横浜港北ノースポート・モール店」は9月15日にオープンしたばかりの新店舗だ。ジーユー史上最大級の品揃えと売り場面積を持つ。横浜市都筑区の商業施設「ノースポート・モール」(東急不動産)の4階フロアに位置する。
店舗を訪れると、まず目に飛び込んでくるのは、入り口近くの柱に設置されたデジタルサイネージ。タテ141.5センチメートル×ヨコ79.5センチメートルのタテ型の画面には、広告ビジュアルのほか、購入者が「GU」商品を思い思いに着こなした写真などが映されている。
こうしたコーディネート提案を中心としたプレゼンテーションと、顧客体験の向上こそ、同店舗の主眼。開店の情報公開時は、鏡面に画像などを映し出せる特別な鏡「オシャレナビ・ミラー」や、タッチパネルを搭載したショッピングカート「オシャレナビ・カート」に視線が集まったが、改めて店舗を見回すと、アナログ面でも「GU」がコーディネート提案に力を注いでいることがわかる。
たとえば、その場の商品を組み合わせればコーディネートできるよう商品を並べた棚。店内の壁一面を活用し、掲出したグラフィックとの相乗効果で視認性を高めている。また、約820坪(約2710平方メートル)の売り場に置かれたマネキン人形の数はおよそ200体に上る。どこを見回しても、種々の着こなし例が視界に入る。
これは、ファッション市場で、「これさえ着ればOK」というメッセージが通用しづらくなっていることの裏返しでもある。いわゆる「マストバイ(買うべき)アイテム」と称される商品で、「GU」では2015年のガウチョパンツ(すそが広く、ゆったりとした七分丈のボトムス)のヒットが思い起こされる。
最近では、そこから一歩進み、「マストバイアイテムをどう着こなすかがセンスの見せ所」とされる傾向が強まっている。結果、着こなし例となる情報が求められるようになってきた。「GU」がコーディネート提案を強化しているのは、こうした背景がある。

デジタルデバイスだけでなく、壁面をうまく使ったり、マネキン人形を多用したりと、アナログ面でもコーディネートを伝えることに力を注いでいる。
買い物体験こそ実店舗のブランド化
さて、「オシャレナビ・ミラー」と「オシャレナビ・カート」だ。「オシャレナビ・ミラー」は、店内に6カ所ある。すべての商品にはRFIDタグが付いており、ハンガーを持って「オシャレナビ・ミラー」に近づけると、その商品のくわしい情報が鏡面に表示される。RFIDとは、ICタグと読み取り機の間で無線通信を行う技術を指す。タグに書き込まれた、商品の識別情報をミラーが内蔵する装置で読み取って情報を出している。
「オシャレナビ・ミラー」に現れる情報は、大きく2つ。スタイリング画像と商品購入者のレビュー(講評)だ。スタイリング画像はモデルを撮影したものと、購入者が投稿したものの2種類ある。
レビューでは簡単に5点満点の採点に加え、自由回答の感想が見られる。感想には、投稿者の年齢層(10歳刻み)や、身長や体重、足のサイズなどが添えられており、自分と近しい体型の人の投稿を探して読むことができる ...