総合専門小売店として国内外で48店舗を展開する「東急ハンズ」。本社が用意したPOPを中心に、売り場に合わせて店舗独自のPOPも制作、売り上げアップにつなげている。店舗環境と企画に合わせたPOP作りの極意とは。

POPは商品の魅力を伝えるプラスアルファの存在
──東急ハンズ各店において、店内にあるPOPはどのような役割を担っているのでしょうか。
POPは装飾のひとつでもあり、従業員の代わりに接客し、購入を検討しているお客さまの後押しをする存在だと考えています。店内装飾でお客さまがワクワクする気持ち、「欲しい」という購買意欲を高めつつ、さらにPOPで細かい商品説明をして「こうやって使いたい」という購入後の具体的なイメージをふくらませます。使用イメージがより明確に伝わるように、POPは画像や写真をメインにして、そこにテキストを添える構成にすることが多いです。
そのため、POPを付ける商品は、見た目からは使用シーンをイメージしづらい商品に限定しています。POPを増やすと、商品を置くスペースがなくなってしまいますし、売り場が乱れてしまいます。数は最低限にとどめ、店舗全体のバランスを保つことが重要。POPに記すのは、パッケージには書いていないことが基本です。
商品のパッケージに記載された情報は、お客さま自身で確認できますからね。使う時のコツや使い方の提案など、商品の魅力を伝えるプラスアルファの内容を、POPでお知らせするのが理想的です。
──反響がよかったPOPの事例はありますか。
「秋らしい、ハンズならではのヒントのコト提案」という切り口で物の先のコトを表現したPOPです。シリーズ展開しましたが、全体的に反響がよかったです。その内のひとつに、スーツのシワをサッと伸ばせるスチームアイロンがあったのですが、これは「自分でスーツのシワを伸ばす」ことがひとつのステップアップになるだろうと考え、社会人男性に向けて訴求しました。
POPでは、スチームアイロンの機能やスペックだけではなく、スチームアイロンを取り入れた新しい生活を伝えるようにしました。「いそがしい時にもスピーディーにシワを伸ばせます」というように、「これを使えばこんな生活があなたに訪れますよ」と、買った後の、“ステップアップした自分”の生活が目に浮かぶようにしたのです。
ほかにも「こんな生活を始めませんか」という同じ切り口で、コーヒーやお弁当箱など複数の商品を訴求しました。それぞれのPOPはテキストと画像を統一し、同じフォーマットにしました。こうしたコト提案を行った結果、いつもより売り上げがアップしたんです。パッケージでは訴求しきれないコト提案をPOPで行えば、お客さまの購買意欲を高められます。こうしたコトの提案こそ、いまの時代、より受け入れられるものだと考えています。
女性からの反響が良かったPOPは、「いっしょに旅するコスメ」です。化粧品の売り上げを伸ばすために、「旅行に気軽に持っていけて、メイクが落ちにくい旅コスメを使いませんか」という切り口で、複数の化粧品を訴求しました ...