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成功するコラボ販促

ヤッホーブルーイング × ワンダーテーブル 飲食店企業と組んで得た成果

ヤッホーブルーイング × ワンダーテーブル

11月7日、「よなよなエール公式ビアレストラン」と銘打った飲食店「YONA YONA BEER WORKS(よなよなビアワークス)」の6店めが東京・恵比寿にオープンする。広さは46坪(約152平方メートル)、席数は68席。初めて立ち飲み席も用意した。想定客単価はディナーで3800円。

ヤッホーブルーイングのクラフトビール(多様で個性的なビール)を常時10種類以上扱い、新作を先行して提供したり、季節限定ビールも出す。飲食事業を手がけるワンダーテーブルが経営する。両社が協業を実現したプロセス、そして成果は。

目的はブランド体験の場 直営店からコラボへ

ヤッホーブルーイングが、飲食店経営のワンダーテーブル(東京・新宿)と協業し、飲食店オープンに至った目的は、クラフトビールブランド「よなよなエール」の主な市場である首都圏で認知を高めること、ファンを集めてイベントを開催できる場を設けることにあった。

「プロモーションとして機能するパブを作りたかった」と、出店時にワンダーテーブルとのアライアンス構築を担当していた、ヤッホーブルーイングのマーケティングディレクター稲垣聡氏は振り返る。

「消費者向けはもちろんのこと、料飲店向けにも『よなよなエールが盛り上がっているから仕入れよう』と検討いただく、という副次的効果も狙いにあった」(稲垣氏)

一号店をオープンした2013年以前から、よなよなエールのファンを数十人規模で集めるイベントを都内で開いていたが、より大きなスケールで実施したい、回数も増やしたい、という思惑があったという。

はじめから他社との協業が念頭にあったわけではない。当初は直営店鋪にするつもりだったという。国内でも、ビアパブを経営するクラフトビールブランドはめずらしくない。

しかし、肝心の飲食業を営むための知見がヤッホーブルーイングにはない。親会社の星野リゾートは、長野・軽井沢でなら飲食店を運営しているものの、首都圏とはノウハウが異なる。

「おそらく、精一杯努力しても、せいぜい小さな立ち飲み屋がひとつできるくらい。それでは当初の目的であるところの、プロモーション機能や、ファンが集う場所づくりは難しい。『では、どうするか』と、飲食店のコンサルタントに相談したところ、『コラボレーションする手もある』と教えてもらい、ツテをたどって、ワンダーテーブルにたどり着いたんです」(同)

ヤッホーの試算は甘かった

ワンダーテーブルは1946年、三井船舶(当時)の水産部門「協同水産」として設立。その後、海運業を経て、三井系を離れ、ヒューマックスグループに。飲食業に乗り出したのは91年のことだった。

ブラジルの「バルバッコア」の日本1号店を出したのは94年、米ロウリーズ・レストランズとの業務提携で日本1号店を開いたのは、2001年。この開店翌月に「ワンダーテーブル」と改称した。ことし10月末までにそのほかの運営ブランドを合わせて52店を運営する。

「自社のブランドともに海外ブランドを日本市場に導入し、着実に成長させてきた企業です。きちんと継続的に利益を出されており、業界での認知度も高い。当社としてはクラフトビールを流行で終わらせず、中長期的に拡大するため、飲食店ブランドを成長させる力のあるワンダーテーブルに、ぜひお願いしたいと考えました」(稲垣氏)

飲食店を出そうと着想した2011年は現在ほどクラフトビールが注目されていなかった。飲食店はもちろん、大手小売でも話題にはならず、個人経営の小さなお店で扱われる場合が多く、ワンダーテーブルのような規模の大きな企業が参入する状況ではなかったのだ。

それでも「これから伸びる分野で、いまがチャンスだ」と説明し、根気強く提案を重ねた結果、ようやく企画が動き出した。

出店が決まった後も、実現までの道のりは、決して平坦ではなかった。ヤッホーブルーイング側は数百万円程度の初期投資で店を出せるのではないかと考えていたが、飲食のプロであるワンダーテーブルからすれば、その考えは甘かった。稲垣氏が当時のやり取りを明かす。

「『首都圏である程度話題になるような飲食店を出し、しっかり成長させるのであれば、少なくとも数千万は必要』との試算でした。予算にかぎらず、物件の目利きなど、すべてが目からうろこが落ちる思いでしたね。きっとワンダーテーブルも我々の認識の軽さに驚かれたのでは。最初はまったく話が噛み合わなかったので、『東京で飲食店を運営するというのは、そもそも⋯』というような基礎から教えてもらいました。

当社が投資するわけではありませんし、数千万円の規模で企画を動かすとなると、意思決定も慎重になっていくわけです。そのかわり、料理もオペレーションも内装も、レベルが数段高くなる。フタを開けてみれば、直営とは大違いだと、いまは思います」

共同店舗の出店は、お互いの強みを生かしてスピード展開できることにある。「YONA YONA BEER WORKS」はことし11月7日にオープンする「恵比寿東口店」で、すでに6店鋪めを数える。店舗スタッフも150人を数えるまでになった。

「こうしたスタッフが、さらに多くのお客さまと対峙している。裾野の広がるスピードは、実際にコラボしてみて感じたことです」

一方、成功を左右する重要な要因となるのが、企業間の意思疎通だ。「スケジュールやチェック体制、ビールにかんする知識、店内でのイベント施策など、企業間での知識レベルの違いが浮き彫りになりました。先方の担当者の方もかなり力を尽くしてくださって、いまはスムーズに、うまく回せるようになりましたが、それでも3年間かかった。簡単なことではなかったです」 ...

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