服が売れなくなってもなお、アパレル業界は縮小するパイの争奪戦に消耗してきた。そもそも、なぜアパレルは衰退したのか。そして復活の道はあるのか。その源泉にある消費トレンドとインサイトについて考える短期連載の最終回。
弱体化するNYファッションウィーク
この9月、米国で開催された2018年の春夏向けファッションショー「NYコレクション」に行った。1週間行われるイベントだが、昨年に比べてちょっと寂しい雰囲気だった。まず、ショーの会場がハドソン川沿いの古い倉庫になった。数年前、リンカーンセンターに大きな会場を作り、メルセデス・ベンツがスポンサーだったころのラグジュアリーな空気はどこへやら。
それもそうだ。2年前から始まった"SEE NOW, BUY NOW(いま見て、いま買う)"モデルが浸透し、ブランドごとにショーで紹介する商品のシーズンがバラバラになっている。
9月でいえば、いますぐ着られる2017年秋服のショーと通常の流れである2018年春夏のコレクションが混在しているのだ。クリエイティブに力を入れるいくつかのブランドは、安定的にショーを開催しているパリに発表の場を移した。また資金繰りが厳しくなり、ショー自体をやめたブランドも数多かった。
こうしてメジャーブランドの参加が減った結果、ジャーナリストや、インフルエンサーたちも今回NYをスキップする人が多く、全体に寂しい状況となったのだ。
小売りの現場の危機
「NYコレクション」の弱体化は、もちろん小売りの弱体化と密接に結びついている。アップタウンにある大手デパートの「バーグドルフ・グッドマン」「バーニーズニューヨーク」「サックス・フィフス・アベニュー」なども覗いてみたが、全体に客数が少なく、閑古鳥が鳴いていた。
唯一元気なのは、ここでも中国人やイスラム圏からの観光客。米国人で優雅に買い物をする人をあまり見かけなくなった。最近ではGAPグループが米国全土で200店舗クローズするという記事や、百貨店の「メイシーズ」や「ブルーミングデールズ」、ショッピングモールの苦境も日々のニュースで目にしている。ちょっと前まではあんなに店にあふれていた人々も、もはや姿を見かけない。ショッピングは店よりECで、という流れはもう止められない。
同様のことはダウンタウンのSOHOでも起きていた。SOHOは最先端のファッション街であり、いまではルイ・ヴィトンやサンローランなど、ラグジュアリーブランドが軒を連ねるエリアとなっている。
そのSOHOもアップタウンで起きていたことと状況は同じだった。空き店舗が目立ち、"FOR LEASE"の文字。その寂しい光景には背筋が寒くなった。ウエストブロードウェイにはユニクロやH&Mが並ぶが、高そうなショッピングバッグを持っている人をほとんど見かけない。
現地で不動産業をしている友人が嘆く。「このあたりはトランプ大統領就任以降、景気がよく賃料が軒並みアップしている。人件費、原料費などコストがかさむ小売業では到底払えない」という。一時ファッションに押されて少なくなってきたアートギャラリーが戻ってきた。「アート業界はまだまだ投機対象として活況だから」なのだそうだ。皮肉だ ...