これから企業の中核を担う35歳以下の販促キーパーソンにスポットをあてる本連載。第3回は、5月26日にオープンしたJINSの旗艦店「JINS渋谷店」で店長を務める松山晋さん(29歳)だ。過去の失敗から学び成長する松山さんに、スタッフとの信頼関係を築くための取り組みや店長としてマネジメントするにあたっての課題などを聞いた。
新たにオープンした旗艦店「JINS 渋谷店」の店長に抜てき
アイウエアを製造・販売するジンズ(旧称ジェイアイエヌ)は、全国の各都道府県でショッピングモールなどを中心に店舗展開を行っている。「JINS渋谷店」は5月26日、東京・渋谷の井の頭通り沿い、竹久夢二居住地跡近くにオープンした旗艦店。
商品は交差する長い木の角柱に並ぶ。それぞれの角柱は立体的に交わり、一見、宙に浮いているかのように錯覚する。こうしたデザイン性の高い店鋪設計は、ことし4月、社名をブランド名と揃えて「ジンズ(JINS)」とした同社が、「JINS渋谷店」をブランドの新たな発信地にしようとする狙いが伺える。
JINSブランドのこれからを担う渋谷店で、店長に抜てきされたのが松山晋さん(29歳)だ。渋谷店オープンに向け準備が始まったのはことし3月。準備期間は通常よりも長めに設け、本社とエリア責任者、店長の松山さんとで、渋谷店のコンセプトや運営方針のすり合わせを入念に行った。また、松山さんは準備期間を利用し、渋谷店に新たに集まるスタッフ一人ひとりに会いに行った。
「渋谷店のスタッフは18人。通常の店舗の2倍ほどの人数になりますが、新たなスタッフ一人ひとりと事前にコミュニケーションを取りたいと考え、それぞれが働く店舗までできる限り訪ねて回りました」(松山さん)
渋谷店がオープンしてからは、店舗やスタッフのマネジメントが主な仕事だ。「店舗の管理や庶務も多くありますが、最も大きな仕事はスタッフの目標をしっかりと設定し、行動できる環境を構築すること。スタッフにやりがいを持って働いてもらうために、どれだけ力を尽くせるかということを常に考えています」
初店長を任された店舗での 失敗の経験を活かしていく
松山さんは2013年に新卒で入社し、ことしで5年目。ジンズを選んだ理由は、「実力主義でチャンスが多い会社だと感じたから」。
「私は受験や学生生活で挫折を経験し、ストレートで大学を卒業した人よりも3年遅れて社会人になりました。当社に入社を決めたのは、自分の力で、その遅れを取り戻したいという気持ちがあったからです」
学生時代は自分自身に諦めを感じていた時期もあったという。しかし自分の人生なのだからと奮い立ち、チャレンジすることを決めた。
「入社したときは、とにかく行動する、もう後には引けないという思いでした」
それが、仕事に対するモチベーションになった。渋谷店は、スタッフ時代も含めて入社以降、5店舗めとなる。初めて店長として赴任したのは、3店舗めの「JINSミーナ津田沼店」だった。
「入社して1年で店長というチャンスがもらえました。ただ、そこではたくさんの失敗を経験したんですよね」
初めて店長を務めるという気負いもあってか、松山さんには「JINSブランドを届けるために完璧でありたい」という気持ちが強かった。その気持ちをスタッフに対しても押し付けてしまっていたという。
「毎日怒ってばかりだったので、スタッフの共感も得られないまま信頼関係がなかなか築けなかった。それでも、もともと人数が少ない店舗だったこともあり、私一人で何とかなると思っていたんです。しかし結果的にスタッフが離れてしまい、店舗が回らなくなってしまった。店長として店舗を守れないと感じたとき、初めて『いままでのやり方が間違っていたんだ』と痛感しました」 ...