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訪日販促と地方創生の交差点

まずは「知る」ことから 急増する訪日ムスリム プロモーションから考える対応策

訪日外国人の急増に伴い、ムスリム旅行者も増加しつつある現在。ふだんはなかなか馴染みがなく、「ハラール」の理解も必要なムスリム旅行者の迎え方については難儀する店舗も少なくない。具体的にどんな対応策が必要なのか。

インドネシアのムスリムタレントであるラウディア・シンシア・ベラの日本取材時の写真。「浅草すし賢」のうにの写真には、62万1000件の「いいね!」が。写真などのソーシャルメディアによるコミュニケーションはムスリム対応でも有効だ。

【その1】 拡大する訪日ムスリム客市場

訪日外国客のなかでも、ムスリム観光客の市場は、年々着実に伸びてきています。2016年度の外国人観光客の訪日外国人数は過去最高の2403万9000人でした。

JNTOの主要20市場のデータに、外務省の国別人口におけるムスリム率を単純に掛けて試算すると、全世界からおよそ150万人のムスリム観光客が日本に来日していると推測できます。訪日外国客全体の数字から見ればまだまだ小さな割合ですが、今後伸びるポテンシャルのある市場なのです。2015年度は100万人だったので、前年比50%増と確実に伸びてきています。

全世界のムスリム人口は2020年では19億人になると推計されており、そのうちの10億人がASEAN圏で暮らす人々だとされています。この数字を見ても、ムスリムの訪日客数の成長の余地は非常に大きいと言えると思います。

そんな訪日ムスリム観光客で一番注目される国が、インドネシアです。世界で最も大きく、日本から最も近いイスラム教国になります。人口の9割近い約2億2000万人がイスラム教徒。訪日客数を見ると、2016年1月~12月のインドネシアからの訪日客数は、前年比32.1%増の27万1000人。伸び率では、主要20カ国で最も高い数値となりました。

2017年1月~4月でも前年同期比45.5%増の12万1700人。主要20カ国中の伸び率トップを維持しています。ただ、いま来日しているインドネシアからの観光客の80%は、実は非ムスリムなのです。つまり、ムスリム対応をすれば、2億人の伸びしろがあるということになります。

ここでもう一つ重要なのは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックです。「オリンピックとムスリム」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、全世界で人口が増えていることに伴い、スポーツ分野でもムスリム勢が躍進しています。

オリンピックにおけるムスリム・アスリートの人数はというと、2012年のロンドン・オリンピックでは、全アスリート約1万500人に対し、ムスリムは4000人で38%でした。2016年のリオ・オリンピックでは、全アスリート約1万1000人に対して6000人の54.5%と、2000人も増えています。

五輪競技には、アフリカ系の身体能力の高い選手が多く出場します。北アフリカや西アフリカはイスラム教国が多く、自然とムスリムのアスリートが増えます。また、欧州諸国が移民を受け入れているのも、そうした傾向の一因かもしれません。いずれにしても、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催時には、世界中からムスリム・アスリートが来ます。

競技側もムスリムの受け入れ態勢の準備を進めています。顕著なのは、ロンドン五輪以降、ムスリム女性がスカーフなどで頭髪を隠す「ヒジャブ」の着用が、サッカーなどで認められたこと。ムスリム・アスリート市場をにらみ、ナイキがことし3月にムスリム女性のためのスポーツウエア版ヒジャブ「Pro Hijab(プロ・ヒジャブ)」を発表するといった動きも出てきています。

では、東京オリンピック・パラリンピックはどうなるでしょうか。予測では、全アスリート約1万2000人に対し、8000人~9000人がムスリムになるとされています。もちろん選手本人だけでなく、同伴する家族やスタッフもムスリムであることが多いので、全体ではさらに大きな規模になると思われます。なのでムスリム対応は必須と言えるでしょう。訪日外国人客ばかりでなく、東京五輪だけでも確実にムスリム対応が求められる可能性が非常に高いのです。残り3年弱で間に合うでしょうか。

【その2】 最低限押さえておくべき知識

では、より実務的な例を見ていきましょう。まず認識していただきたいのは、イスラム教徒が日本に来て困ることです。その最たるものが「食事」です。その次に「礼拝」があります。

ここでは、簡単にイスラム教で食べてはいけないものを説明します。

(1)豚肉を使った料理や、豚由来の成分を使用したもの。

(2)アルコール飲酒はもちろん、調味料としての日本酒、ワイン、みりんなど。

(3)豚肉以外の肉である牛、鶏、羊。これらの肉も、イスラムの教義に則って、と畜されていないものは食べられません。

なかでも特に厄介なのは、約180品目のいろいろな添加物や原料に使われている豚由来の食品原料です。たとえば「ラード」は、コーヒークリームやアイスクリーム、乳化剤としてマーガリンやビスケット、スープなどに使われています。「肉」は、ソーセージやハム、ベーコンに使われています。「皮」はゼラチン、アイスクリーム、マシュマロ、ヨーグルト、ゼリー、ソフトキャンディに使われています。

さらに乳化剤は、ほとんどのお菓子に使われています。最近では、植物由来や大豆由来の乳化剤などの表記もあますが、その多くが「乳化剤」としか表記していないため、これではムスリムは食べていいのかどうか、判断できません ...

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