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『地味すぎる』学術書が続々増版 止まらない『応仁の乱』の快進撃

中央公論新社/呉座勇一 著『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』

学生時代、「1467(ヒトヨムナシイ)」の語呂合わせで覚えた「応仁の乱」。550年前、京都を中心に勃発した内乱だ。室町幕府の権威を失墜させ、群雄割拠の戦国時代を招いたこの大乱を題材にした硬派な新書がいま、38万部を超えるベストセラーとなり、出版業界を騒がせている。異例のヒットを巻き起こしている仕掛け人の一人に聞いた。

2016年10月の発売以降、売れ行きを伸ばし続けている『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』。猛スピードで増刷を重ね、発売から10カ月近く経ったいまでも、その勢いは衰えていない。しかし中身は複雑な戦乱を重厚な文章でつづっており、万人にやさしい本ではない。出版不況といわれる中、なぜこのアカデミックな新書が好調なのか。発行元の中央公論新社 宣伝部で本書のPRに携わった東山健氏に話を聞いた。

中央公論新社
宣伝部
東山 健 氏

―発行部数が38万5000部(6月21日時点)に達しているということですが、発売当初から順調だったのでしょうか。

2016年10月20日に発売してから最初に増刷したのが11月4日だったので、初動が非常に良かったんです。中公新書は初版が1万2000~5000部ほどで、『応仁の乱』も1万3000部スタートだったのですが、書店での販売動向のデータをチェックして、あまりの売れ行きの良さに2週間ほどで増刷が決まりました。

私も正直ここまで売れるとは思っておらず、実は発売前にはほとんどプロモーションをしていませんでした。宣伝部が本格的に動き出したのは、発売から6週間経った11月下旬です。中公新書の新しいラインナップが発売しても『応仁の乱』は売り上げが抜きん出ていて、「これは年末年始前になにか手を打たなければ」と思いましたね。

―『応仁の乱』のプロモーションで工夫した点を教えてください。

ターニングポイントになったのは、広告に"遊び"を取り入れたことです。11月末に日経新聞に書評が掲載されて、その効果も相まってさらに売り上げが伸びてきたので、12月に最初の新聞広告を打つことにしました。「大増刷」「たちまち4.8万部」などのコピーや売り上げのランキング、著者のトークイベント情報などを入れました。

編集部としては「著者のイメージを損ねないよう、極力オーソドックスな広告にしたい」と考えるので、当初の広告はわりとノーマルな内容になりましたが、宣伝部としてはやはり、刺激的な表現にしてでも、多くの方々に関心を持っていただきたい。そのためには、「この広告は正直、正統派すぎて面白みが足りないな」という思いもありました(笑)。

そこでユニークな要素を入れたコピーにしてみたんです。本文中で著者の呉座勇一先生が応仁の乱のことを「劇的で華々しいところがまるでなく」「ただただ不毛で不条理」「不人気」などと表現をしていたことに着想し、宣伝部のメンバーから「地味すぎる大乱」というコピー案が出たんです。最初は応仁の乱の主戦場となった関西限定で展開をしていました。

ほかにも「知名度はバツグンなだけにかえって残念」「ズルズル11年」「スター不在」「勝者なし」など、面白おかしい要素を盛り込んだキャッチーなコピーを加えたり、また社内の関西出身者の協力のもと、「先の大戦、知らへんの?」「関西にいはるのに?」などと関西人の心に響くようなコピーも入れていったんです ...

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