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インバウンド集客 勝ち組の施策

プロモーションの肝は、訪日外国人客の『港』を押さえること

西武鉄道

アジア圏を中心に訪日外国人の利用者を増やしている西武鉄道。その多くが、秩父と川越への観光客だ。日本有数の観光スポットに比べ、あまり知られていなかった秩父・川越エリアは、どのようにして認知度を上げたのか。西武鉄道の旅客誘致を担う、運輸部スマイル&スマイル室の新規旅客創造担当である石原遼太氏に聞いた。

「西武鉄道×台湾鉄路管理局 協定締結記念電車」として運行しているLAIMOのラッピング電車

グループの各事業を通じて、訪日外国人の需要を取り込む

西武鉄道は、訪日外国人獲得戦略の要を「秩父」と「川越」の2つの観光地に設定して、プロモーションを行っている。2013年4月に運輸部スマイル&スマイル室が誕生し、新規旅客創造担当の海外を担当してインバウンド事業を開始後、だんだんとプロモーション対象の国を広げ、担当人数も増やしてきた。2015年には台湾鉄路管理局、2017年3月にはマレーシア鉄道公社とも姉妹鉄道協定を結ぶなど、その体制を強化してきた。

鉄道事業だけでなく、プリンスホテルなどホテル・レジャー事業とも連携しながら、西武グループ全体で訪日外国人の需要を取り込もうとプロモーションを行ってきた。

最初に力を入れたのは、親日家が多く、訪日旅行客も目立つ台湾と、個人旅行化が進むタイだ。西武鉄道が最近注目しているのは、鉄道利用が増えてきている香港や、同社が秩父の観光で連携する「秩父地域おもてなし観光公社」が、台湾やタイのほかに注力するアメリカとフランス。今年度からは中国市場へのプロモーションも強化する構えだ。

「当初から力を入れている台湾やタイは、認知度も上がり、成熟してきました。今後は香港や中国本土に加え、アメリカやフランスといった欧米圏も狙っていきたい」と西武鉄道運輸部スマイル&スマイル室新規旅客創造担当・石原遼太氏は語る。

中でもターゲットとするのは、何回も日本を訪れている個人旅行者だ。秩父に来訪した外国人に訪日回数を尋ねると、「5~10回」「10回以上」と回答した人が最も多く、合わせて半数以上を占めた。日本に慣れた旅行者ほど、インターネットで友人の口コミなどを見て来日することが多いことから、各国の旅行者がそれぞれよく利用するメディアを探し、限られたリソースで効果的にプロモーションできるよう考えている。

訪日外国人を獲得するため「3つの柱」を中心に推進

西武鉄道の訪日外国人に対する施策は、認知度を上げるためのプロモーションと利用のしやすさに関わる乗車券の値ごろ感、受け入れ体制の構築の3つを柱にしている。

プロモーションは、多言語で制作した秩父と川越のパンフレットや、多言語対応のWebサイト、外国人向けのFacebookアカウント、旅行博覧会への出展、海外メディアやインフルエンサーなどを用いて幅広く行っている。「秩父や川越の認知度は箱根や鎌倉などと比べるとまだ低いですが、年々着実に上がってきています」(石原氏)。「川越アクセスきっぷ」という企画乗車券の対外国人販売枚数は、前年比約60%増の売り上げを記録した。

こうしたプロモーションに触れ、日本を訪れた外国人が鉄道を利用しやすいよう、2017年4月には訪日外国人向けに新たな乗車券も発売した。これまでの乗車券は、特急券と乗車券に分かれていたが訪日客には説明しづらく、利用実態を見ても西武秩父や本川越といった沿線の観光地までの区間でさほど途中下車しない傾向にあるなどの課題があった。

そこで、西武線沿線の各エリアでの周遊を促す狙いも込め、1000円で西武線全線が1日乗り放題(多摩川線を除く)になるワンデーパス「SEIBU 1 Day Pass」をつくった(秩父鉄道の一部区間の乗り放題、2日間乗り放題の乗車券も同時に発売開始)。

併せて訪日外国人客の受け入れ体制も強化するため、秩父への入口となる池袋駅に西武ツーリストインフォメーションセンター池袋(TIC)を設置。年中無休で常時英語と中国語ができるスタッフを配備し、スムーズに観光案内ができるようにした。

各国の傾向に合わせてプロモーション手法を工夫

さまざまなプロモーション施策の中で、とくに反響が大きかったのは台湾で大人気の、マレーバクのキャラクター「LAIMO(ライモ)」を起用したキャンペーンだ ...

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