業種業態を問わず「ストーリーが重要だ」ということが多くの場面で言われるようになった。実際、「ストーリー」が備わった商品のほうが動きがよい。ではその「ストーリー」はどのように設計し、どうやって伝えるか。メーカーと飲食店それぞれの視座から語る。
データを元に実感を込めてストーリーを伝える
ヤマサ醤油の藤村功氏が紹介したのはことし20週年を迎えた「昆布つゆ」。1997年の発売当時は、つゆと言えば「めんつゆ」。使用用途はそうめんというのが定番だった。しかし少しずつ、「ほかの料理にも使える」という風潮が出始めていたころだ。
調味料は単体で口にするものではないため、使用機会を増やすにはメニュー提案が効果的。そこでヤマサ醤油は「昆布つゆ」を発売した年の秋、「秋味ご飯」という炊き込みごはんのメニューを訴求。
「これには裏付けがありました。食卓調査でモニターの方が、その日のメニューが家族に喜ばれたかどうかを回答するのですが、炊き込みご飯は市販のめんつゆで作ったほうの人気が高かった。それで『昆布つゆでつくる秋味炊き込みごはんだ』とテレビCMを打ちました。そうしたら翌日から問い合わせが殺到しまして、商品が軌道に乗りました」(藤村氏)
その後も、肉じゃがや豚の角煮など家庭の定番メニューを「昆布つゆ」でつくる提案を継続。20年を経てヤマサ醤油の売り上げを支える商品となった。「実際に作る方に喜んでいただけている。そういうデータを元に、メーカーとしても実感を持ってお伝えすると。消費の現場のリアルを伝えたことがよかったと考えています。事実に基づくストーリーそのままマーケティングで発信するということですね」(同) ...