大きな「N」のマークをシンボルに、世界有数のスポーツメーカーとして存在感を放つニューバランス。創業111年目を迎えた老舗メーカーながら、世界で3番目のアスレチックブランドを目指し、近年はサッカーやゴルフ、アパレルと新たなカテゴリーへの挑戦も続ける。歴史と革新を両立させる企業のなかで、冨田智夫社長は社名のような"新しいバランス"感覚のある経営手法で成長に導こうとしている。
―貴社では現場力をどのように捉えていますか。
私たちは現場を「ブランドを表現する場」だと捉えています。つまり、「ニューバランス」というブランドを表現する力こそが、現場力になります。私たちとお客さまが実際に接する現場で、ニューバランスというブランドをどのように伝えるか。あるいは、お客さまにどのような体験を提供できるかが、最も重要なポイントだと認識しています。
その上で、私たちの現場力は、「モノ」「ハコ」「ヒト」の3つの要素から成り立っています。はじめに「モノ」ですが、ニューバランスというブランドは、1906年にアメリカのボストンで矯正靴のメーカーとして誕生しました。今年で111年目を迎えますが、グローバル化した現在でも、一部の商品はアメリカに6カ所ある自社工場で製造しています。アメリカのブランドとして、アメリカで「モノ」を生産することはブランドの根幹でもあります。
さらにスポーツブランドとして、突出した長い歴史が現在の商品にも受け継がれている。いま陳列されている商品にも、111年間のストーリーやブランドの歴史を背景に持っているのです。
「ハコ」は、「器」とも言い換えられます。現在国内に6店舗ある直営店は、ただ商品を販売するためだけのスペースではなく …