京都の和傘店「日吉屋」5代目当主・西堀耕太郎氏は、廃業寸前だった社業を職人兼経営者として立て直し、世界市場へと飛躍させた業績の持ち主だ。同氏は、「ユニークな技術や歴史を伝承するには、現代の生活にフィットさせる革新が必要だ」と語る。
老舗京和傘工房である日吉屋。和傘とその技術を応用した商品を世界展開する5代目当主・西堀耕太郎氏の業績は、伝統産業分野で成功モデルを築いたことだ。
元々は公務員であった同氏。和傘の美しさに打たれ日吉屋を継いだ当初は、主力商品の和傘が日常生活では時代遅れとされ、業績はふるわなかった。しかし、和傘の良さを再発見し、傘の骨の機構を用いた和風照明「古都里(KOTORI)」をはじめとする新商品開発に成功、売上高を40倍以上に拡大させた。
「『伝統産業』という呼び名は、『日常では用いられないものを閉鎖的な職人社会で作っている』という負のイメージも伴います。受け継いできたユニークな技術と歴史こそ最高の財産ですが、さらに伝えていくためには革新を続けることが必要です」と西堀氏は指摘する。
「伝統工芸品に対する評価は海外でも高いものの、その評価は『エクセレント』という類のもので、必ずしも購買に結び付くわけではありません。伝統の技を守る一方、その技で現代の生活にフィットするものを生み出す必要があります。『伝統は革新の連続』が私の理念ですが、これは和傘の作り手と経営者を兼ねてきた経験の中で実感したものです」
伝統産業が海外販路を開拓する場合、製品に対する「ニーズの少なさ」と、「売価の高さ」に起因する販売の難しさが常に課題となる。
ニーズの掘り起こしについては、海外市場のバイヤーなどと交流し、製品開発の「お題」をもらうことが重要だ。西堀氏が創業した日本の伝統工芸や中小企業の海外販路開拓を支援する「TCI研究所」の事業の一つでは、バイヤーの声をもとに製品を開発。異業種という外側の人々の目と声が重要になるという。
また、伝統産業の品は製造コストがかさみ、多量に売れるものでもないため、売価を抑えるのは困難だ。
そこで重要となるのが、グローバルニッチの考え方だ。購入者は好事家や富裕層と想定し、大量生産品とは一線を画すものを、品質に見合う価格で世界中に売る。「売価に説得力を持たせる手段としては、製品や企業が持つ物語をPRするストーリーブランディングも有効です。『言うは易し』ですが、これ以外に採算を合わせる方法はないでしょう」