スマートフォンの普及に伴い、とくに若者の間ではネット通販で商品を購入する機会が増えている。彼・彼女らに対し、店舗はこれからどのような魅力を発信して集客し、購買へつなげればよいのか。若者世代に近く、企業と若者のビジネス上の橋渡し役としても活躍する石井リナ氏が解説する。
店舗が力を発揮する場面とは?
まず、若者から見たときの店舗の強みを考える前に、企業から見て、若者にリーチするために店舗を持つことについて考えたいと思います。働きはじめるまでの大学生を含む世代を「若者」と仮定すると、社会人と比べ、圧倒的に自分のために使える時間が多いことが特徴となります。学校などの授業後、早い時間から繁華街に遊びに出て、街をふらふらするというのも彼・彼女らの特権と言えるのではないでしょうか。
私も高校生のときには、目的もなく渋谷や原宿の街に繰り出し、友人とプリクラを撮ったり、ファストフード店やコーヒーショップなどで、おしゃべりに花を咲かせたりして過ごしました。当時、渋谷のセンター街には、ドラッグストアやシューズショップ、携帯ショップなども多く、買うわけでもなくふらふら入っては、「これかわいい」「あれがいいらしいね」などと話しながら、お店を後にしたことを覚えています。
若者が多く集まる街に店舗をかまえるメリットのひとつは、こうしたふらふら来店する若者たちにリーチできる点と言ってもいいのではないでしょうか。はっきりと買い物の目的があるわけではないにせよ、そうした店舗に入って友人同士で時間を過ごすのは、消費行動において潜在層である人々にリーチしているとも言えます。少し前のデータですが、図1の総務省の調査でもほかの年代と比べ、中高生、大学生などの若者のほうが友人との交際時間を割いていることがわかります。
社会人になってからは、自分の時間も限られ、街を自由にふらふらする時間も減ります。買いたいものが決まっていれば、ネットショッピングのほうが便利なため、そちらを利用する人も増えます。
以上のことを踏まえると、まだ明確な買い物意欲が生まれていない若者にアプローチし、購入者層に引き上げるという側面では、店舗が力を発揮するのではないでしょうか。
店舗に足を運ぶ3つの理由
若者にうまくリーチした店舗の事例として …