訪日外国人観光客は2016年に初めて2000万人を突破した。政府は2020年までにさらにその倍の4000万人を目標に掲げている。東京や大阪、京都など旅行者が一部の地域に集中する中、その恩恵を受けられていない地方自治体も多いが、“思い込み”により機会を損失しているケースもあるようだ。
7割は大阪・京都から出ない
神戸市はナビゲーション・交通情報のナビタイムジャパンと連携して、訪日外国人観光客向けのアプリの提供を2015年3月に開始した。その背景には、「神戸市は歴史ある港町であることから、市民は『国際観光都市』という意識が強いですが、訪日外国人観光客は兵庫県全体でみても大阪や京都の5分の1程度しかいない。意識と現実にギャップがありました」。
そう語るのは、自身も神戸市に5年ほど住んだことがあるというナビタイムジャパン 交通コンサルティング事業部でマネージャーを務める野津直樹氏だ。同社が提供する訪日観光客向けアプリ(NAVITIME for Japan Travel)のデータを分析すると、関西に来る外国人観光客の7割以上は大阪あるいは京都から出ないという調査結果が出ている。
「昔と違ってみんながみんな船で神戸にくるわけではない。理由がないとこない場所になっている可能性がありました。そのため、まずは現状を客観的に分析する必要があったんです」と野津氏は言う。
夜間になると観光客が激減
奈良県では東大寺と奈良公園が観光の人気スポット。だが、野津氏によれば「日中は訪日観光客が一定数いますが、夜間になると一気に減っている。夜はあまりすることがないと判断され、ご飯も食べずに大阪か京都に帰ってしまっている、という仮説がデータから浮かびました」という。寺や公園に人が集まっても、消費される金額は限られている。そのため、地元経済には貢献できていないという課題があった。
また、奈良県ではホテル不足という課題もあり、短期的には昼間の観光客の消費喚起が必要となる。長期的にみてホテルを建てるにも、細かな分析が必要だ。近畿地方整備局とナビタイムジャパンが取り組んだ滞在分析では京都市内の細かなGPSの移動データも分析。
すると訪日観光客は地元の人も知らないような場所に集まっていることがわかった。野津氏は、「その場所に実際に行ってみると、外国人に人気だというゲストハウスがありました。このようにデータを分析してみると、外国人がどのような宿泊施設を好むのかがわかります。一般的なホテルを建てれば良いというわけでもない」と解説する。
データを分析することで …