買い物行動をデータで捉え、個々の消費者理解を深める
国内市場に大幅な成長が期待できないこれからの時代、大半のメーカーにとっては、従来からの売り上げ・シェア競争に加え、優良顧客の獲得競争が大きな課題となっている。そのためにどのようにデータを駆使するべきか。博報堂 博報堂買物研究所の前嶋誠一郎氏が解説する。
デジタル販促 瞬間を捉えて売上増
ソーシャルメディアからの流入と商品購入者が大幅に増加─。東急モールズデベロップメントが2016年10月、国内外9つの“109”施設の公式サイトとEコマースサイトを統合し、リニューアルオープンした成果だ。その背後には、どのような戦略があったのか。
東急モールズデベロップメントは、2016年10月9日、商業施設「SHIBUYA109」をはじめとした国内外9カ所の“109”施設の公式サイトとECサイトを統合、新たに「SHIBUYA109 ブランドサイト」をオープンした。リニューアル後の同サイトでは、オウンドメディアとソーシャルメディアを連携させることで、「調べたい」「買いたい」といったさまざまなユーザーのニーズを集約している。同時に、実店舗への来店動機の喚起としても機能している。
リニューアルの背景には、SHIBUYA109の売り上げの低下を受け、ブランド価値を再定義する動きがあったという。「数年をかけて改めて事業やブランド価値を見直し、SHIBUYA109はただのアパレル・ファッションビルではないと考え直したんです」(東急モールズデベロップメントSHIBUYA109事業本部ブランド統括部部長 中里研二氏)。
そこで同社は、20歳前後の世代にムーブメントを起こし、カルチャーを生むことが「SHIBUYA109」のビジネスの原点だと再定義。そうして行った施策のひとつが、デジタル上の施策を通じて店頭の販促を強化することだった。
デジタルにおける情報発信としてコンテンツの肝となったのが、SHIBUYA109の強みでもある各ブランドのショップ店員だ。各店舗の店員に固定客がつくことも珍しくなく、ソーシャルメディアが浸透した現在、彼女たちはインフルエンサーとしての影響力もますます強めている。「ショップ店員である彼女たちは、来店客に大きな影響力を持っています。企業からメッセージを発信するよりも、彼女らが商品の良さを伝えたほうが …