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経営トップ 販促発想の着眼点

開業医のプロモーション支援で調剤薬局の利用者を拡大

藤井江美(アイセイ薬局 代表取締役社長)

ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。

調剤薬局のビジネスモデルは、医療機関が発行する処方箋にもとづいて薬を提供することだ。しかし診療報酬の改定など医療と調剤薬局を取り巻く環境は大きく変化している。アイセイ薬局は従来の調剤薬局のビジネスモデルから一歩踏み出し、自ら開業医を招致して医療モールを形成。モールの中で調剤薬局事業を行う。さらに、アイセイ薬局が協力して医療モールへの集客施策を展開。また、自社の広報誌を全面リニューアルして媒体価値を高め、企業とのタイアップ広告企画なども増やしている。

アイセイ薬局 代表取締役社長 藤井江美(ふじい・えみ)氏
神奈川県出身。1993年日本大学薬学部卒業。他薬局勤務を経て1997年アイセイ薬局入社。店舗勤務、出向勤務を経たのち学術研修部(現:薬事支援部)、内部監査室、人材開発部と様々なキャリアを重ねる。2013年にはアイセイ薬局初の女性取締役に。その後、代表取締役副社長を経て、2015年2月より代表取締役社長に就任。

医療モールを形成
利用者数は年間延べ712万人

調剤薬局のビジネス形態は、医療機関が発行する処方箋にもとづいて、患者に薬を提供するのが基本。自ら処方箋を発行することはできず、言ってみれば“受け身”のビジネスモデルだ。

こうしたビジネスのあり方から一歩踏み出し、各診療科の開業医を招致して医療モールの形成をプロデュース、モールの中で調剤薬局事業を展開しているのがアイセイ薬局だ。

業績は好調だ。7年前の平成21年3月期のグループ連結売上は191億円だったが、その後、毎年売り上げを伸ばし続け、平成28年3月期は607億円に達した。店舗数も増加を続け、10年前の平成18年3月期はグループ連結で74店舗だったものが、平成28年10月1日現在で、関東エリアを中心に全国315店舗を展開する。店舗の利用者は年間で延べ712万人。

年齢別では65歳以上が約35%を占め、他の年代はほぼ均等の割合で分散している。

開業医をマーケティング支援
イベントで集客へ結びつける

アイセイ薬局の事業は調剤がメインであるため、医療機関の利用者が増えないと、売り上げが増加しにくいビジネス構造になっている。そのため、来店する患者数を増やすには、本来的にはモールに入っている開業医が営業施策を展開し、患者を多く集める必要がある。しかし、開業医は医療の専門家であり、集客などマーケティング的な知見や経験は乏しい。また、開業医の広告展開は法律で規制されていて、商業広告などを行えない事情もある。そこで、アイセイ薬局は開業医へのマーケティング支援を行うとともに、医療モール自体の認知向上や集客のためのマーケティング展開を積極的に行っている。

そのひとつが、地域住民を対象にした、医療・健康イベントだ。全国の店舗において「からだゼミナ~ル」「こども薬局」「健康チェック&相談会」といった無料イベントを合計で年間約50件実施している。

からだゼミナ~ルは、医療モールに入っている開業医らを講師として招き、医療や健康をテーマに分かりやすくレクチャーするものだ。アイセイ薬局 代表取締役 藤井江美氏は「からだゼミナ~ルをきっかけに、講師となった医師にセカンドオピニオンを求めたり、初診から診察を受けるようになったりと、増患効果が認められています」と話す。

こども薬局は、地域に住む未就学児・小学生らに薬剤師の仕事を体験してもらうプログラム。狙いは、子どもたちに薬剤師への興味・関心を高めてもらうことももちろんあるが、子どもたちの親に向けて、薬局・薬剤師の仕事やサービスの内容をより深く理解してもらうことを主目的とする。「患者さんにとって、調剤薬局というのは、薬を受け取る場所というイメージが強く、薬剤師の仕事内容については、理解されていない面があります。子どもの薬剤師体験を通して、親も薬剤師の仕事がどういうものであるのか理解を深めることができ、その結果、薬剤師との関係性が良くなるケースが多くあります」(藤井氏)。

健康チェック&相談会は、血圧・血流、肌年齢、脳年齢などを計測し、薬やサプリメントの飲み合わせ、運動、食事などの相談やカウンセリングが無料で受けられる。相談などを通じて、調剤薬局や薬剤師をどう活用したらいいか、参加者に気付いてもらうのが狙いだ。

医療モール シンフォニア御池
アイセイ薬局がプロデュースした、京都にある医療モール。創立100年を超える産婦人科をはじめ、内科、眼科、皮膚科、耳鼻科など複数科目の診療医が集まり、総合的な医療サービスの提供を可能にしている。

アイセイ薬局 烏丸御池店
医療モール シンフォニア御池にあるアイセイ薬局 烏丸御池店。

アイセイ薬局 下総中山クリニックファーム
蔦屋書店を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブとタイアップしてライブラリースペースを設けた。ヘルスケアを中心に写真集やレシピなどの書籍を揃える。

目を引く表紙の広報誌で一般消費者の認知も拡大

筋肉ムキムキの覆面レスラーが、制服姿の若い女子事務員にヘッドロック、女子事務員は辛そうに顔をしかめている写真に見覚えがある読者もいるかもしれない。

アイセイ薬局が、利用者向けに発行している広報誌「ヘルス・グラフィックマガジン」2015春号の表紙の写真だ。頭痛を特集したこの号は、ビジュアルのインパクトの強さ、調剤薬局が発行している広報誌という意外さが、ソーシャルメディアを中心に一般消費者に受け ...

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