成長分野を正しくとらえよう 求められる次の一手
ことし1月〜9月累計の訪日外国人客数は1797万8000人。2016年の客数は、2015年通年の1973万人を超える公算が大きい。一方、為替の影響を受け、消費額は2014年並となった。企業は今後、どう舵取りを行うべきか。ジャパンショッピングツーリズム協会の新津研一専務理事に聞く。
訪日客向けプロモーション
訪日旅行中に最も買い物をする訪日中国人客の視線が、為替の影響や、個人旅行客の増加を受け、手の届きやすい日用品に広がっている。訪日中に買うものを見定める傾向も見えてきた。国内での外国人向けプロモーションもますます増えそうだ。
鳥居を連ねたモニュメントの前で、「忍者」と一緒に記念撮影。ソーシャルメディアへの投稿を促した。鳥居や忍者といった、日本のシンボルは認知度が高く、好反応を得た。
P&Gは10月4日〜6日の3日間、大阪・道頓堀川で、訪日中国人観光客をメインターゲットに布用除菌・消臭スプレー「ファブリーズ」のプロモーションを実施した。黒装束に身を包んだ忍者が昼1時から夜9時まで、戎橋付近の会場に出現し、中国人観光客を呼び込んだ。戎橋は、江崎グリコが南西たもと側に設置しているので有名なスポット。繁華街の中心部でもある。
「ファブリーズ」は、衣類や布製品の除菌・消臭ができるスプレーだが、中国人客の認知強化は始まったばかりだ。中国人消費者は「ニオイは香りを重ねて対策するもの」という意識が強く、「除菌・消臭」という概念が薄い。
「中国ではソーシャルメディアを中心に、キー・オピニオン・リーダー(有力な発信者)を起用した話題づくりにとどまっている。他メーカーの商品を含め、中国での認知強化はこれから。今回のイベントを機に、拡販に務めたい」(P&Gの浅井行代ブランドマネージャー)
会場付近では、4人の忍者スタッフが道行く中国人観光客に声をかけ、「ファブリーズ」を実際に衣類にスプレーして商品の試用を促進。鳥居を模したオブジェの前での記念写真撮影にも応じた。
参加者は、1日あたり1000人ほどが参加。特に食事帰りで料理やタバコなどのニオイが気になる夕方〜夜は盛り上がりを見せ、1時間に250人がつめかけて列をなしたという。
「今回は商品体験をしていただくことにウエイトを置いたが、今回のイベントは非常に満足している。商品機能に対し驚きを見せた観光客は少なくなく、『体験』を目的とすることで、良いコミュニケーションができると実感した」(浅井氏)
中国人観光客は2015年までは家電製品など高額商品を主に購入していたが、ことしに入り、購入対象が日用消費財に広がっている。
ホットリンクによる、ネット上の口コミを元にした「日本で購入したもの」で2015年2月と16年2月を比較すると、「温水洗浄便座」が3位から22位に急落、いわゆる“爆買い”のシンボルだった「炊飯器」は圏外となった。一方 …