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トップの現場力

「共感性」と「感情移入」が最高のパフォーマンスを引き出す

米山 久(エー・ピーカンパニー)

「塚田農場」や「四十八漁場」などの居酒屋を中心に、海外展開にも力を入れているエー・ピーカンパニー。同社は、農業や漁業などの「生産」から物流・加工の「流通」、外食店舗などでの「販売」までを自社で一貫して手がける、「生販直結モデル」の事業を構築している。飲食だけの枠組みに捉われず、世の中に新しい価値を生み出して“食のあるべき姿”を追求する。

エー・ピーカンパニー 代表取締役 社長
米山 久(よねやま・ひさし)氏

1970年生まれ。2001年エー・ピーカンパニーを設立。2004年、「塚田農場」の前身となるみやざき地頭鶏専門居酒屋「わが家」を出店。2006年、宮崎県に農業法人を設立、自社養鶏場および、加工センターを立ち上げる。2008年度外食アワードを受賞。2011年、自社漁船による定置網漁を開始、漁業でも第一次産業へ進出。2012年にはシンガポールへ海外第一号店となる「Tsukada Nojo」を出店。現在は「塚田農場」「四十八漁場」など、15業態150店舗を展開。

―貴社の「現場力」について、どのようにお考えでしょうか。

事業に対する取り組みや目的への“共感性”や“感情移入”が高いほど、「現場力」が発揮できると考えています。研修や教育を通じてスタッフに目的を理解してもらったとしても、取り組みに対しての本質的な部分が腑に落ちていなければ、現場のスタッフから最高のパフォーマンスは引き出すことはできません。我々にとって、お客さまに喜んでいただくのは当たり前の話。さらに踏み込み、“一次産業を活性化させること”に共感できるか、お客さまに訴えられるかが大事です。

研修では、地鶏の生産地である宮崎に行き、一次産業の実態を知る機会を設け、鶏の屠殺(とさつ)シーンを見学したり、あるいは体験するケースもあります。現在の食文化・食事情や一次産業の状況を知り、その生産物をお客さまが必要とすることで一次産業が潤っていく仕組みをしっかり理解すれば、現場スタッフも一生懸命に売りたいという気持ちになってくれると考えています。

各店舗に売り上げの目標はありますが、「売るという義務」で動くのではなく「生産のために売らなければならない」と思ってもらえることが重要です。与えられた職務を従順にこなす能力だけではない力を発揮するために、いかにして“共感性”を育んでいけるかを常に考えています。

―共感性を高めるために、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

「魚万博」や「宮崎万博」というイベントを、1年に1回必ずやっています。これは、「地鶏」や「鮮魚」、「ホルモン」といった業態ごとに、生産者と当社のアルバイトを含むスタッフが一堂に会して直接交流するイベントです。「魚万博」であれば、直結している30〜40人の漁師を招いて、漁の説明や苦労話をしていただく。100人以上出席するアルバイトにもその魚をどのように提供しているか話をしてもらっています。グループディスカッションや試食会もあり、今後新しく提供する目玉の魚があれば、漁師から提供方法のご提案をいただいたり、コミュニケーションを通じた商品開発を行ったりもしています。

通常は生産者と現場スタッフが直に触れ合う機会はほとんどありませんが、こうした万博を通じて、共感性を高めることができる。漁師の苦労話を聞いて泣いているアルバイトがいたりしますし、漁師も自分たちの獲った魚をアルバイトがどれほど一生懸命提供しているかを知り、「もっといい魚を獲ってこよう」と感じてくれたりもします。

他店では、接客の際に、「当店の料理長の自慢の作品」となりますが、我々の店舗では「私たちの生産者さんが獲られた魚です」とお客さまに提供しています。現場スタッフも生産者と触れ合うことで、その魅力をお客さまにも伝えたくなるものです。そうして共感性が高まっていくことで、例えば時給を主目的に入ってきたアルバイトのスタッフが、いつの間にか生産者の思いを背負いながら商品を提供するようになるんです。

他にも、社内のSNSサーバーで生産者とつながる仕組みや、月に1、2回程度の誰でも自由に受けられる研修、月に1回生産者を招いてお話しいただく機会も用意しています。単に食材や料理を横流しで提供するのではなく、商品にスタッフ自身の感情が移入されていなければ、現場は機能しないと考えています。

―一次産業に関わられている生産者の方々にも“現場力”が宿っているのですね。

「天然魚」専門の居酒屋、四十八漁場。持続可能な漁法を行う複数の漁師と直結する。

実際、お客さまに提供するお皿の上に自分たちの生産物がのるのだとリアリティを持って考えている生産者は、これまであまりいなかったのではないかと思います。一次産業事業者は自分たちの生産物を市場に卸しますが、生産物はその後、流通業者、市場を通じて店舗に届きます。つまり、お客さまの顔を見ることはなかった。そうすると、ともすれば作業もルーティン化しがちで、結果として商品のクオリティコントロールはできなくなってしまうわけです。

一方で、我々はお客さまの反応をダイレクトにフィードバックできます。お客さまの喜びの声も、地鶏のクオリティが低いという意見があれば、はっきりと伝えます。我々が求めるクオリティを満たさなければ購入もしません。彼らと我々は一心同体で …

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