販売促進の専門メディア

           

訪日販促の明暗 ポスト爆買いを生き残る

マーケティングは「民族」×「収入層」で

高橋学(アジアクリック)

訪日客市場は、中国・香港・台湾の中華圏が目立ちがちだが、東南アジア諸国にも巨大な市場がある。ASEAN観光客の訪日推進PR、企画を手がけるアジアクリックの高橋学氏にポイントを解説してもらった。

ASEAN諸国の共通点を探る

東南アジア諸国連合(ASEAN)には10カ国が所属します。インドネシアだけでも、人口は約2億5500万人(2015年、同国政府統計)。300以上の民族が暮らし、約700の言語や方言があると言われます。宗教は9割がイスラム教ですが、キリスト教(カトリック、プロテスタント)、ヒンズー教、仏教、儒教を信仰している人たちがいます。

価値観が異なれば、消費行動も異なります。少なくとも「民族」×「収入層」の2つを押さえてマーケティングをするべきです。タイ人だから、シンガポール人だから、というのはとても乱暴な態度。少なくとも「民族」×「収入層」の2つを押さえてマーケティングに取り組むほうがよいと思います。

まずASEAN諸国で共通する性質に着目してみたいと思います。おおよそ次の3つが共通点です。

◦訪日理由の多くは、「家族と幸せな時間を過ごしたいから」。ASEAN諸国の人々は、総じて家族に対する思いが強い傾向にあります。基本的に大家族です。勤め先はマレーシアだが、実家はシンガポールといったように、家族が国を離れて暮らしていることも珍しくありません。「いとこ」という概念が希薄で、兄弟姉妹と同様にとらえたりもします。

◦「自慢するのが好き」。良いことがあれば、それを周囲に知らせることに躊躇しません。いわゆる自撮り(セルフィー)も積極的です。「素敵なシチュエーションに出会いました」「幸せ」といった発信も好んで行います。

◦「トクしたい」。実際に安く済ませるよりも、気持ちの面での得を好むようです。例えば、お目当ての商品を「100円安く手に入れられた」と言いたいために、150円電車賃かかっても行くような傾向があります。2つめの共通点にも関連しますが、それをまた周りの人に言いたい、という側面もあります。

死生観も日本とは異なる面があり、信仰にかぎらず基本的に延命治療を敬遠します。死は運命であったり、アッラーの思し召しであったりするからです。それは今日かもしれないし、明日かもしれません。だからこそ、生きている間の、家族との時間を大事にしようと思うようです。

訪日対応の明暗

ASEAN 各国の価値観を押さえたマーケティングを

親日国・タイは画像とシンプルなコピーで

タイは、ASEANの中でも際立って親日的です。ここ数年連続で、タイで最も売れた商品・サービスに「日本観光」が挙がりました。けれど現地は不景気でもあり、円高がハードルで、楽観視はできません。私の知り合いからも「いつ両替するのがいいか」と相談を受けることがあります。

タイ人は、「1年間に8行以上の文字を読まない」といった意味のことわざがあるほど、文章を読まない習慣があります。現地の広告でも、「王者のビール、シンハー」や「10年後には沈む国、ツバル」など、端的なキャッチフレーズと写真を中心とした表現が目立ちます。日本の観光Webサイトは …

あと59%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

訪日販促の明暗 ポスト爆買いを生き残るの記事一覧

訪日販促の明暗 ポスト爆買いを生き残るの記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
販促会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する