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経営トップ 販促発想の着眼点

島村楽器が10年間で約1.5倍の増収を達成した理由

島村楽器

ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。

「楽器店は何となく入りにくい」と感じている人は少なくないだろう。音楽を専門にしている人ならば別だが、「ちょっと楽器を触れてみようかな」などと軽い気持ちのライトユーザーにとっては、店員から軽くあしらわれそうで敷居が高い面があった。島村楽器は1982年にショッピングセンター内に出店以来、店舗とショッピングセンターの通路の間には壁やドアを設けず、自由に出入りできる店舗を積極展開。こうした店舗戦略やマーケティング施策が奏功し、業績は好調で、2015年期は過去最高の売上高を記録した。

島村楽器 代表取締役社長 廣瀬利明(ひろせ・としあき)
1975年東京生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行)入行。2004年、同行を退職し、島村楽器に入社。店舗販売および経営企画業務に従事する。同年、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にへ留学。2006年、MBAを取得し帰国。同年、取締役に就任し、2013年に代表取締役社長に就任。

ショッピングセンターに出店
毎年5店舗のペースで増加

楽器販売と音楽教室やスタジオの運営を事業の柱とする島村楽器。年々売上高を伸ばし続け、2015年度は332億円と過去最高を更新した。2005年度の売上高は210億円であり、この10年間で約1.5倍に売り上げを伸ばしたことになる。

楽器市場は、少子化や趣味の多様化などにより、縮小している。こうした市場環境の中、島村楽器はなぜ業績を伸ばし続けているのだろうか。

その理由のひとつは、出店する「場所」にあると言えそうだ。イオンなどのショッピングセンターで島村楽器の店舗を目にした人は多いだろう。事実、同社はイオンやパルコなどのショッピングセンターに重点的に出店。ここ10年間は、年間5店ほどのペースで新規の出店を進め、現在の全店舗数は160店にまで拡大した。

当初は他の楽器店と同様、路面に出店していた島村楽器が初めてショッピングセンターに出店したのは1982年、ジャスコが東京に1号店を出したときだ。

島村楽器 廣瀬利明代表取締役社長は「楽器販売だけでなく、音楽教室や練習スタジオのスペースも広く取った店舗にしたことが、当時のジャスコの岡田卓也社長から面白い会社だと思ってもらえたようです。同グループの新しい商業施設がオープンするたびに声をかけてもらうようになり、ショッピングセンターにおける店舗展開が本格化しました」と話す。

ショッピングセンターに出店している島村楽器の店舗
店舗に入口の扉を設けないのが、島村楽器の特色。従来の楽器店は音楽を専門にやっている人でないと店に入りにくい雰囲気があったが、入口の扉をなくすことで、陳列してある楽器を見たショッピングセンターの来店客が、軽い気持ちで店に入って行けるようになった。

音楽教室を運営
楽器の販売とともに、スクール事業は島村楽器の事業の柱となっている。

本屋に入るようにふらっと立ち寄れる気軽さ

ショッピングセンターに出店している島村楽器の店舗の特徴は、通路面には扉を設けず、人が自由に出入りできる設計になっていることだ。かつて、ほかの楽器店は入口のドアを開けて店内に入るようになっていた。店の雰囲気もそれほど明るいものではなく、音楽を専門にしている人でないとドアを開けるのに勇気が必要だった。島村楽器はドアをなくすことで、ショッピングセンターの通路から、誰でも気軽に店内に入れるようにした。

廣瀬氏は「楽器を演奏していない人でも、本屋さんに入るのと同じような感覚で、ふらっと店内に入ってもらえるようになり、リーチできる顧客の層や数が増えました」と話す。

店舗の立地とともに、売上向上の要因として考えられるのが「接客重視」という同社の経営方針だ。

「当社の接客方針は『モノを売る前にコトを売り、コトを売る前にヒトを売る』です。単に楽器を売るのではなく、お客さまの要望を丁寧に聞き取り、お客さまの音楽ライフにとって、よりふさわしい商品を提案しています。そのためには、お客さまとできるだけ密なコミュニケーションを取らないといけません」(廣瀬氏)。

商品を買ったお客さまには、電話で商品購入のお礼と商品に不具合がないかの連絡を入れている。同社では、これを「サンキューコール」と呼んでおり、こうした接客重視の店舗運営を行うことで、販売スタッフの接客コミュニケーションへの意識を高め、楽器の販売にもつなげている。

豊富なギター在庫
ギター売場の様子。ギターは周辺アイテムも含めれば、同社が取り扱う楽器の中では、最も売り上げが多い楽器だ。

楽器の演奏者は総人口の1割
もっと増やしていきたい

店舗の立地、接客重視の経営姿勢と共に ...

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