森永製菓のチョコレートアイスバー「パキシエル」の売上が好調だ。2015年度(2015年3月~16年2月)の売上は、発売初年度(2013年3月~14年2月)に比べ、約2.5倍に。パキシエルの最大の特徴は、先端部分の厚さが7ミリ※という板チョコのような分厚いチョコレートでアイスクリームをコーティングした点。パキパキとした食感もさることながら、かじったときにチョコが割れる「パキッ」という音も耳に楽しい。音とおいしさの関係を研究する大学教授とタッグを組み、ユニークなプロモーションも展開している。
※標準品質

科学的な根拠をもとに、ソーシャルメディアをはじめとするキャンペーンや商業施設でのプロモーションなどを展開。アイスクリーム市場で快進撃を続ける「パキシエル」のマーケティングを担当する、森永製菓の山本愛氏に話を聞いた。

森永製菓 マーケティング本部 冷菓マーケティング部 山本愛氏
“森永らしさ”を追求パキシエルの誕生秘話
―2013年から販売し、3年目の現在、売り上げが初年度比約2.5倍へと伸長しています。
山本氏▶︎ 「パキシエル」はベルギー産 チョコレートを使っており、本格的な味わいを楽しめることが魅力です。おいしさに加えて、まるで板チョコのように分厚く、“パキッ”とした歯ごたえがあって、ネット上では「クセになる」「ハマる」などの口コミから話題性が高まりました。こうしたことが、売り上げのアップにつながっていると考えています。
―パキシエルが誕生した背景を伺えますか。
山本氏▶ 実は、パキシエルの前身の商品として「濃厚チョコレートアイスバー」を2012年度まで発売していました。しかし、先行する他社商品が複数ある中、明確な差別化が図れず、苦戦していたんです。
パキシエルは、前身商品の反省を踏まえ、“森永らしさ”と先行商品にはないコンセプトを求めて、リニューアルを行い、誕生した商品です。
森永らしさという点では、チョコレートにこだわりました。当社は大正7年に日本で初めてカカオ豆からチョコレートを一貫製造した企業です。私どものチョコレートに対する強いこだわりを商品にも活かすべく、チョコレートを前面に押し出すような商品にしています。
また、先行商品は当時から、“なめらかチョコ”や“生チョコ”をキーワードにしているものが多くありました。競合商品がひしめくなかで埋もれないよう、製造手法を変えることで、これまでにはないチョコレートの圧倒的な存在感をバーアイスで実現させようと、考えました。
―先行商品にはないコンセプトとは、どのようなものですか。
山本氏▶アイスをかじったときの食感の衝撃を徹底的に追求したことです。お菓子の板チョコでも、冷やしてかじり、“パキッ”とした食感を楽しむ人は多かったんです。そこで、アイスバーでも板チョコのような“パキッ”という食感に、可能な限り近づけられないかと考えました。
その衝撃を体現するために、チョコアイスバーの製法を根本から見直しました。従来の製法は、アイスバーの中身のクリームを成型してからチョコレート液にひたす「ディッピング」という方法で、チョコが2~3ミリの薄さにしかコーティングできません。
当社は、チョコをあらかじめアイスバーの型に充填して外側から冷やして固め、そこから固まりきってない中央部分のチョコを吸い取って、あいた空間にクリームを流し込むという製法を採用しました。
これによって先端部分が7ミリの厚さのチョココーティングを実現させ、アイスをかじったときに、板チョコのような“パキッ”とした食感を楽しめるようになったんです。
―そうした工夫は、リニューアル直後から成果として表れましたか。
山本氏▶ 2013年にリニューアル発売して以降、おかげさまで好調をキープしています。当初の狙いどおり ...