古くから、旅館の営業は主(あるじ)である男性の仕事であった。しかし、あわら温泉では女将たちが表舞台に立ち、活躍している。
あわら温泉に軒を連ねる13軒が加盟する「女将の会」。世代を超え、信頼関係で結ばれている
「関西の奥座敷」とも称される、開湯130年以上の歴史を誇る芦原(あわら)温泉。豊富な湯量で各旅館が自家源泉を持つことから、温泉を共同管理する仕組みがなく、かつては旅館どうしの協力体制がない状態だった。
そんな中、24年前、「一度みんなでご飯でも」と女将たちが集まる企画が立ち上がった。それが、『あわら温泉女将の会』の結成につながっていったのである。会の始まりから5年、転機が訪れる。97年のナホトカ号重油流出事故だ。当初は復旧の目途も立たない状態だったが、多くのボランティアの助けにより早々に回復。女将たちが関西のメディアに出演し感謝を伝えると、意外な波及効果が現れた。
「女将は旅館の中にいるもの」という常識がある中で、表に出始めた女将たちは世間の注目を集め、イベントへの出演依頼が舞い込むようになった。
『女将の会』は、インターネットによる情報発信にも力を注いだ。会がホームページを開設したのは、2000年。「手書きのノートがモニター上にある」イメージでつくられており、手づくり感のあるデザインになっている。
旅館『白和荘』の女将・立尾清美氏は、こう振り返る。
「とにかく発信し続けることが大事で ...
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