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大学ゼミ訪問

頭と体をバランス良く使い、問題解決能力を養う―関西学院大学 川端ゼミ

関西学院大学

フィールドワークを通して流通やマーケティングを考える

川端基夫ゼミは「リージョナル・マーケティング」をテーマとし、幅広く流通やマーケティングにかかわる課題を研究している。リージョナル・マーケティングとは、「地域」「空間」「場所」という視点から、マーケティング活動を考えること。川端教授は「場所や空間によって、売れる商品や売れ行きは変化する。場所が消費に与える『意味』を考えることが重要」として、現地に出向いて「現場に触れる」ことを重要視している。

そのためフィールドワークを取り入れていることがゼミの特徴となっている。京都、大阪、神戸で年に3〜4回、東京でも年に1度行い、実際にまちの空気を味わいながら消費を考えている。川端教授自身も、海外でのフィールドワークや調査を取り入れた研究スタイルが基本。「流通もマーケティングも現場はまち。現場は多くの発見をもたらしてくれるので、学生にもぜひこの面白さを体験してほしい」と話す。

また、川端ゼミでは、企業とのコラボレーションにより、実際にマーケティングの現場も体験する。パッケージのデザインや社会的な認知度を高める施策など、企業から出された具体的な課題に取り組む。文献で学んだ理論と現実の現場の課題をどのように結び付け、いかに論理的で現実的な解決策をひねり出すのか、という問題解決能力を養う。

企業の課題解決を実践で学ぶ

2015年度は「エシカル・マーケティング」をゼミ全体の大きなテーマとした。「エシカル・マーケティングとは、倫理的な消費行動を研究する分野。環境保全や社会的平等に役立つのならと、あえて価格の高い商品を購入することがその典型例。倫理的な意識が高い人々をターゲットとする特殊なマーケティング活動ではあるが、今後は重要な意味をもつ」と川端教授は指摘する。

具体的には、有機食品の生産と販売を手がける企業のマーケティング関連の課題解決に取り組んだ。企業側が抱える多様な課題を聞き出しながら、その解決策を考え、プレゼンを重ねていく。その中で、実際に学生のアイデアが採用されることもある。例えば、今回は大学内の教職員レストランで、有機食品を使ったメニューを開発して販売するというアイデアが採用された。「有機食品の消費が拡大しないのは、有機食品と消費者の接点が少ないからでは」という問題意識が発端となり、レストラン側の協力も得ながら、「有機パスタのランチセット」として販売した。実際に開発にかかわった学生は、「パスタや野菜はもちろん、オリーブオイルやパセリも有機のものを用いました。値段は他のランチより5割も高くなりましたが、それでも趣旨に共感して注文してくれた人がたくさんいて良かった」と話す。他にもホームページの改善案や有機野菜で作った動物写真をバナーに使うアイデアなども採用された。

川端教授は「企業から具体的な課題が出されるので、学生も熱心に取り組む。企業側からは『若い人の新しい柔軟なアイデアが欲しい』と言われるが、思いつきレベルのアイデアでたとえ成功したとしても何も残らないことが多い。文献を読み、論理的に考え、理屈づけをしながら正しい手順を踏んで解決策を模索していくことが重要だ」と話す。

現場を実際に見て、考えることが重要

川端ゼミでは、学生の卒業論文においても、必ず現地調査を取り入れるよう指導している。例えば、実家が経営する喫茶店で出しているコーヒー豆が、どこでどのように栽培されているかを、実際に中南米やハワイまで調査しに行った学生もいる。ほかにも、日本酒のマーケティング調査のため実際に山口県の蔵元に足を運んでヒアリングを行った学生や、全国のアニメの聖地をまわって地域活性化への影響を調査した学生もいる。

これから必要とされるスキルについて「何をするにしても、とにかく現場を見て考える力が重要。商品を売るときに ...

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