フォロワー数98.7k(2016年1月20日現在)の人気インスタグラマー、@higucciniこと樋口正樹氏。日々の料理の投稿写真には、男料理の持つおいしさのシズル感が漂う。インスタグラムでの料理の“魅せ方”、さらにインスタグラマーならではの買い物や店の選び方について話を聞いた。
木と鉄を使うことで、居心地よい温もりが感じられる樋口氏のキッチンスタジオ。
─以前はIT会社でデザイナーとして働いていたそうですが、料理写真を投稿し始めたきっかけは何だったのですか。
IT会社に勤めていた2003年頃、アフィリエイトを自分でも試してみようと、料理ネタに限らずブログを始めたのが最初です。試行錯誤を重ねるうち、テーマを決めたほうが効果が上がるだろうと思い、選んだテーマが料理でした。
料理はもともと好きでした。料理を作っていると僕自身が幸せな気持ちになれるし、一緒に食べてくれる妻も喜んでくれます。また、料理の見栄えがよければ、作ってみたいと思う読者も増えるんじゃないかと。料理なら毎日続けられるし、自分が被写体にならなくていいのも都合がよかったですし。文章を書くのが苦手なので、料理の写真に1~2行のコメントをつける程度のブログを続けていました。
デジタル一眼カメラが進化し、きれいな写真が撮れるようになったことで、さらに熱が入りました。また、ピンタレストやインスタグラムのように、投稿に対する評価が分かるツールが登場したことも、投稿の腕を磨くのに大いに役立っています。自分の投稿への反応がすぐ分かるのが、ネットの良さです。フォロワーの人たちの反応を見ながら、どうすれば投稿写真やコメントの人気が高まるのかを日々分析・研究しています。
─試行錯誤を続けた結果、料理をおいしく見せる写真のコツがあれば教えてください。
僕の場合、料理に手を添えたり、スプーンですくったりして、実際に食べているような雰囲気を出すようにしています。また、骨付きや皮つきなど、“まるのまま”で見せるのもおすすめです。フォークやナイフを使って食べる料理もいいのですが、“まるのまま”の料理を手を使って食べるのも、五感的に楽しいですからね。焼き色も、おいしそうに見せるには重要な要素です。皮つきの場合は皮に焦げ目をつけたり、餃子や焼きおにぎりの焼き色にもこだわっています。昨年、僕の料理写真で一番「いいね!」が多かったのは、焼きおにぎりの写真でした。
盛り付ける器に関して言えば、白いオーバルのシンプルなお皿をよく使います。白いお皿は料理がよく映えますし、飽きがこないので重宝しています。そうはいっても、新しいテーマの料理には新しい皿を用意したいですし、みんなが同じような皿を使い始めるような時には、他人とは違う皿を使いたいと思います。
そこで僕が好んで使うのは、アンティークです。アンティークには、現代の量産品にはない希少価値があり、古いものになると一点ものも多い。僕の一番のお気に入りは、200年物の木製のカッティングボードです。本当に200年物かは売り主の言葉を信じるしかありませんが(笑)、それでも2~3年しか使っていない市販品と比べると表情がまったく違います。使い込まれた傷あとや、年季の入った質感に味わいがあります。こういった表情が料理のおいしさを引き立て、写真に生活感やシズル感が表れるのだと思います。
『DELISTA GRAMMER'S BOOK』扶桑社
「美しい食卓」をテーマに、食に特化した人気インスタグラマー(デリスタグラマー)100名以上を紹介した本。@higucciniこと樋口氏も登場し、おいしそうに見せる料理写真のコツなどを披露している。
─普段、食材や調理道具はどのように買っていますか。
食材はほぼ毎日買いに行きます。よく行くのは近所のスーパーですが、…