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トップの現場力

誠実さがまだ見ぬ市場を切り拓く、第一興商の現場力

林三郎(第一興商 代表取締役社長)

2016年2月に40周年を迎える第一興商の歩みはカラオケ産業史そのもの。業務用カラオケ機器メーカーとして市場成長とともに発展し、現在主力の通信カラオケシステム「DAM」は市場占有率No.1を誇る。1988年から運営の「ビッグエコー」をはじめとする第一興商ブランドのカラオケボックスは2015年9月時点で全国500店舗以上を展開する。

第一興商 代表取締役社長 林三郎氏(はやし・さぶろう)
1953年、東京都生まれ。72年に実践商業高等学校(現・実践学園高等学校)を卒業後、文明堂日本橋店(現・文明堂東京)入社。79年に第一興商へ入社し、営業担当として全国で活躍。その後、東京支店長などを経て97年に取締役就任。その後、常務、専務を経て2011年より現職。

―第一興商の「現場力」とは?

当社はスナックやパブといったナイトマーケットのお店向けの業務用カラオケ機器メーカーとしてスタートしました。カラオケ産業がここまで発展したのは機器を設置するお店が支持してくださったからです。お店はお客さまがカラオケを楽しんでくださることで、収益が上がります。その結果としてメーカーである私たちも成長できました。当事者のすべてがハッピーになれることがビジネスの基本だと思っています。

また、日本の場合は地域密着型でなければビジネスがうまくいきません。どれほどインターネットが普及して流通が変化しようとも、地域の方々との意思疎通が図れないと事業は続かないので、当社は全国に流通網を広げ、お客さまとの対話を続けながら事業展開しています。

当社のカラオケ機器を置いてくださっているお店の営業時間はバラバラです。しかし、機器にトラブルが起きた場合には、お店の営業に支障がでないように、いち早く対応する必要がありますから、営業拠点ごとに地域の実態に合わせた勤務シフトを組み、柔軟かつ迅速に対応できる体制を敷いています。これが当社の現場力につながっています。

―営業の現場ではどのようなことを意識しているのでしょうか?

特に重視しているのが「清潔感」「挨拶」「誠実さ」です。

清潔感は、ナイトマーケットに女性経営者が多いから。女性は男性以上に第一印象を重んじるので、明るく爽やかで清潔感があることが大切です。

挨拶も同じく重要ですが、最近は家庭や学校で十分に教わらない若者も少なくありません。営業の基本として挨拶の仕方から教えています。

そして誠実さは企業として持たなければならないものだと思っています。

たとえば、目次本が汚れていたとします。マイクや機器の故障ならすぐに対応するでしょうが、目次本の汚れくらいだとお客さまも「ついでがあるときに交換してくれればいい」と言ってくださることが多い。でも、こういうときこそ、雨が降っていても予定が詰まっていても、翌日に持っていくんです。パフォーマンスだと思われるかもしれませんが、小さな約束をきちんと守ると、お客さまは「些細なことでも一生懸命にやってくれる」と喜んでくださいます。誰しも大きな約束は覚えていますが、「ついで」は後回しにしますよね。その結果、忘れてしまえば誠実ではありません。お客さまの期待を裏切らず、誠実に対応することがすべて営業の基本ではないでしょうか。

―どのようにして社員に浸透を図っていますか?

グル―プ全体の従業員数はパート・アルバイトを含め約1万人以上。一人ひとりと直接話ができればいいのですが、現実には難しいので、組織的に浸透を図っています。

日本全国に約120ほどある営業拠点については、ブロック制を敷いています。

会社としての方針や基本の姿勢といったものはまず各エリアの責任者であるブロック長に教え伝え、徹底的に理解させます。それを各自が持ち帰り、どのくらいの精度で現場の社員に落とし込めるかが現場力を左右します。

そもそもこういう内容は座学研修には不向きで、暗記したところで3日も過ぎれば忘れてしまいます。そうならないように、常に現場で意識して、日々の業務のなかで実感として学ぶことに意味があります。ブロック長は学びのための現場作りを担うわけです。とりわけ若者は仕事の意義が分からないまま漫然と作業として進めがちなので、任されている業務が全体のどこに位置づけられ、周囲にどう影響するのか、そこから教えなければなりません。

飛び込み営業などはただでさえ大変な仕事です。ましてナイトマーケットは酔客もいて、どんな人が出てくるかわかりません。私も営業時代、最初にドアを開けるときは緊張したものです。しかし、実践を通して免疫を鍛えていけば、自らの手で全国に第一興商ファンを作っていくことができます。そのための強い精神力を育むことが現場には求められています。

―運営されているカラオケボックスでの「現場力」についても教えてください。

第一興商が運営するカラオケボックス「ビッグエコー」。

カラオケボックスでやはり重要なのは音響です。飲食や接客も大切ですが、お客さまは歌いに来られるのですから、そのための環境を整備しておかなければなりません。採点コンテンツといったカラオケの付加価値も必要でしょう。

次に大切なのがクレンリネス。お客さまにはきれいな部屋で気持ちよく過ごしていただきたいし、女性はトイレの汚いお店には行きませんから、不快のないように整えないといけません。

そして飲食や接客。オペレーションの基本はお客さまの立場に立ったサービスを提供することです。まずは乾杯したいのに、ポテトチップスだけが先にきて、ビールが遅れて出てきたら、お客さまはガッカリするでしょう。仕事の優先順位は、各店舗でしっかりと教育しなければなりません。

優先順位を誤り、サービス品質が下がれば、クレームが発生します。クレーム対応は誠実さが重要。「面倒くさい」「仕事だから仕方ない」といった態度は相手に伝わるものです。お客さまに楽しんでもらうという原点を忘れてはいけません。カラオケはレストランなどと違って、お客さまが2時間も3時間も過ごしてくださる稀有な業種なのです。

ここまで申し上げたことは100%出来ているわけではないですし …

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