現在44フレーバーを展開するキッコーマンの「豆乳飲料」。生まれは1979年までさかのぼる発売36年のロングセラーだ。豆乳全体の生産量は4年連続で過去最高を記録しているが、実は全体の販売量が下がった“豆乳危機”が二度ほどあった。キッコーマン「豆乳飲料」はそのかたわらで、味を向上させたり、豆乳の使い方を広げたりし続け、市場1位を維持してきたブランドでもある。どうファンを増やしてきたのかを聞いた。
男性向け雑誌とタイアップ
男性でも「美肌ニーズ」が高まりつつあることを受け、雑誌『MEN’S CLUB』とタイアップ。同誌の戸賀敬城編集長が元々豆乳ファンで、誌面に登場してアピールした。『MEN’S CLUB』60周年記念イベントでも「豆乳飲料」が登場。
ライト〜ミドル層を育てる
新商品の「キウイ」や「パイン」などフルーツテイストをはじめ、カフェ気分で飲める「紅茶」や「麦芽コーヒー」、和風の「抹茶」「おしるこ」、デザート風の「プリン」「バニラアイス」など、キッコーマン「豆乳飲料」のバリエーションの豊富さは枚挙に暇がない。総数は12月時点で44種類54アイテムに上る。「豆乳飲料」がここまで商品を広げ、市場1位のブランドとなった道筋は、必ずしも順風満帆というわけではなかった。
豆乳の最初のブームは1983年ごろにさかのぼる。「飲むアルカリ性飲料」などともてはやされ、数十社が続々と豆乳製品を売り出した。しかし作りや味はまさにピンキリ。大豆特有の後味や匂いが合わないといった人も多く、ブームはすぐに去ってしまった。豆乳製品を終売する企業が相次ぎ、残ったのはキッコーマンが2006年に子会社化した紀文フードケミファ(当時)ほか数社だったという。
上向きになったのは2000年頃。キッコーマン飲料の大島秀隆氏はこう振り返る。「当時は全体に商品数がなく、お客さまに気づかれにくかった。1尺でもいいから豆乳の場所を作ろうと、その頃はメーカー同士で協力してコーナー化を働きかけたり、せめてタテに広げられないかと、大容量商品を発売したりと売り場づくりに必死だった」。
ちょうどそのタイミングで、大豆に含まれる「イソフラボン」に更年期障害の症状の緩和が期待できるとしてブームが再燃。再び豆乳が存在感を持ち始める。
しかし、ブームを終わらせたのも「イソフラボン」だ。06年、厚労省が同栄養素のサプリでの過剰摂取に警鐘を鳴らすと、波は引いてしまった。
「豆乳はヘビーユーザーの購入頻度がダイレクトに売り上げに反映される。ブームに左右されない、底堅い商品になるには、継続的にライト~ミドルユーザーを育てる必要があると実感した。そこで今に続く、多様なフレーバー展開を始めた」(大島氏)。
現在では若い女性を中心に人気を集める「紅茶」は当初 …