訪日観光客の受け入れ対応や、店舗の認知拡大に向けどんな取り組みをしているのか。店舗や商業施設を運営する4社が集まり、具体的な施策について語った。
左から
サダマツ 営業戦略室長 鹿子生秦氏
髙島屋 営業推進担当課長 小島一喜 氏
ファンケル ファンケル銀座スクエア副館長 遠藤慎一 氏
森ビル 商業運営部 荒隆三 氏
─海外からの来店客の特徴やインバウンド対応の体制について聞かせてください。
鹿子生▶ サダマツは「フェスタリア ビジュソフィア」「ドゥミエール ビジュソフィア」などのジェリーブランドを持ち国内で現在88店を運営しています。昨年、全店を免税店化。海外店は台湾のみで中国にはありません。中国からの訪日客にどう買っていただくかは、無名のところからのスタートでした。1年前に営業戦略部をつくり、2名で訪日客プロモーションに当たっています。理想としているのは、中国のお客さまが商品を買い物リストに入れ、日本の店舗で買い、帰国後SNSで情報を広め、ECでも購入する、という循環です。
小島▶ 髙島屋にいらっしゃる訪日客の6割5分は中国籍です。海外店はシンガポール、台湾、上海にあり、来年ベトナム、再来年バンコクに開業予定です。髙島屋の認知度を調査したところ、シンガポール周辺は高いのですが、中華圏は上海に店はあるもののまだグランドオープンから2年で認知に至っていない状況。いかに認知を広げるかが課題です。私自身は免税対応やインフラ整備などに携わり、2015年よりインバウンド専任担当になっています。
遠藤▶ ファンケルは、無添加の化粧品や健康食品などを扱っています。ファンケル銀座スクエアは、銀座の中央通りにある当社のフラッグシップ店。1階は海外のお客さま向けのインターナショナルショップとして展開し、化粧品や健康食品を中心に販売。在日外国人のお客さまへのスキンケアセミナーなども行っています。訪日客で一番多いのは中国籍の方です。訪日客が増え始めたのは2008年ごろから。中国では素肌の美しさを求める文化があり、不要なものが入っていない安心安全のファンケルの無添加というブランディングが、海外店の展開に伴い受け入れられたことが、その背景にあります。フラッグシップ店で購入することへのステイタスを感じているお客さまもいらっしゃいます。
荒▶ 森ビルの商業施設は都内に集中していて、六本木ヒルズ、表参道ヒルズ、ヴィーナスフォート、ラフォーレ原宿が主要4施設。東京都心部に集中する高品質な商業施設運営を実施していく上で、戦略的かつ横断的なマーケティング及び顧客開発施策を実施することを目的に、運営企画チームを発足しました。インバウンド戦略もそのテーマのひとつです。現在は外部の専門家と共に各店舗の訪日客受け入れ体制を取りまとめていて、アクションプランの策定をしている最中です。多いのはアジア圏のお客さま。羽田空港に近いヴィーナスフォートはバスツアーの中にも盛り込まれ、団体客がメインです。一方、六本木ヒルズ、表参道ヒルズ、ラフォーレ原宿はファッション感度の高い個人旅行者が中心。表参道ヒルズでは、商店会とまちぐるみで連携しショッピングキャンペーンも行っています。当社は街づくりをする会社ですので今後も一施設だけでなくエリア全体をいかに盛り上げ、お客さまをお迎えしていくかが大事だと感じています。
CLOSE-UP! (1)
キャラクター活用で認知拡大、リピート購入策も
➡ハローキティご当地柄優待カードほか顧客の固定化に挑む
●髙島屋/パスポート提示者に本体価格3000円以上で5%割引となる買物優待カードを配布。ハローキティを起用したオリジナルデザインで店舗所在地のご当地柄に。街の地図付きのクリアファイルも免税手続き対象者全員にプレゼントしている。そのほか2年間有効の化粧品購入者向けスタンプカードや、試験的に実施した帰国後海外店舗で使えるクーポンも成果が出ている。
買物優待カード
髙島屋新宿店ではシンガポール建国50周年を祝う式典を開催。SNSでの反響が大きかった。
スタンプカード
クリアファイル
中国人女性のファンも多い俳優を起用、SNSで拡散
●サダマツ/中国で人気の高い古川雄輝さんをアンバサダーに起用。SNSでは古川さん関連の動画が情報拡散のフックに。SNSからECサイトへの誘導も行う。主力商品ダイヤモンドジュエリー「Wish upon a star」は星和缘の中国名で認知獲得に挑む。店頭ではWeChat Paymentの支払い対応も行っている。
アンバサダーの古川雄輝さん
古川さんと貞松社長
ウェイボーでの配信
WeChat Paymentに対応
─注力している訪日客向けプロモーションを教えてください。
荒▶ 森ビルの商業施設横断で初めて訪日客向けキャンペーンを行ったのは、今春。商業施設を紹介するリーフレット(英語・中国語併記)を施設内や近隣ホテルなどで配布しました。銀聯カード保持者への優待のほか、一定額をお買い上げの方へのプレゼント施策、利き酒体験やお花見イベントのような日本の文化やアートにふれるコンテンツを展開しました。目指したのは、日本の魅力を知ってもらい、また東京に足を運んでもらうこと。今後は、施設間の回遊にも力点を置ければと思っています。このキャンペーン期間中、銀聯カード対応店の売上げは施設平均で昨対比300%となり …