店頭ツールがひしめくドラッグストアやショッピングモール内店舗、飲食店などの店頭で効くセールスコピーとは、どのようなものなのか。そのノウハウをPOOL inc. クリエイティブディレクター・コピーライター 小林麻衣子氏が伝授する。
届く言葉は、生きた言葉
まずは、ロート製薬の化粧品「SUGAO」のセールスコピーの話から始めます。そもそも、この商品はそれまで主流だったBBクリーム(皮膚の保護、肌の再生機能を備えたファンデーション)の進化系であるCCクリーム(BBクリームよりもべた塗り感を抑え、肌の色味を整える)という新カテゴリーの商品。塗り心地の薄さや、ふわっとしたさわり心地が売りの商品でした。
この魅力を店頭POPで訴求するためにセールスコピーを練ったわけですが、化粧品が置かれるドラッグストアはPOPであふれている空間です。そこでは、せいぜい2点目立たせたいポイントを見せられれば合格。それも、わかりやすい言葉、人の頭に入っていきやすい言葉であることが必須です。
コピーの内容は、製品の優れている特徴や、スペックである必要はありません。短い情報しか届けられない場面では、「その商品を使うことによるメリット」を簡単に一言で表すことが大切。無理にレトリックを使うと、読む人の理解に時間がかかってしまう場合があるので、素直に書くのが一番です。
そうした点を踏まえて「SUGAO」の場合は、「いま、いちばん気持ちいいファンデ」というセールスコピーを書きました。これくらい簡単な言葉、普段人々が話し言葉として使っているような生きた言葉であれば、情報にあふれた空間でもスッと入ると考えました。
もちろん、競合他社のPOPなどをチェックし、方向性がかぶらないように調整することも重要です。この当時は、「たまご肌」のような、肌訴求を行っているセールスコピーが多く、私の書いたコピーと同じ方向のものはなかったので、「いま、いちばん気持ちいいファンデ」は非常に目立っていました。
ちなみに、この仕事ではネーミングも担当しており、「SUGAO」という商品名自体が塗り心地の薄さや、素顔のような自然な肌を想起させるセールスコピーになっています。また、造語よりも、素顔というそのものずばりな言葉の方が、堂々としていてCCクリームの中の王道感・カテゴリーリーダーの雰囲気を感じてもらえるとも考えました。
「SUGAO」は発売後6カ月で目標売上げをクリアし …